全国2位の京大エースが切り開く未来 箱根駅伝の影で続く快進撃

折山淑美

関東勢に大差をつける快走

関東勢を抑え日本インカレ2位に入った平井。強豪校ではない京大で自主練をしながら力をつけてきた 【スポーツナビ】

「箱根駅伝では自分より力のない選手が持ち上げられているから、『絶対にそういう選手をここで見返してやるねん』という気持ちでやってきました。してやったりという感じでしたね」

 9月5日の日本学生対抗選手権(日本インカレ)男子1万メートル決勝。京都大3年の平井健太郎は「先頭のキトニーのペースが落ちたので、休んでいるなと思い、後ろについている選手を楽にさせないで引き離そうと思って前に出た」と、4000メートル過ぎから先頭に立って引っ張った。ダニエル・ムイバ・キトニー(日本大)も譲らず、再び前に出て5000メートルを14分13秒で通過。先頭集団は思惑通り4人になった。

 その後、キトニーの8000メートルからのスパートには離されたものの、ラストで追い上げた平井は0秒84遅れるだけの28分36秒72で2位に。3位の市田孝(大東文化大)以下の関東勢には14秒以上の差をつける、まさにしてやったりの快走だった。

勉強がしたくて選んだ京都大

 駅伝の強豪である兵庫・報徳学園時代のベストは、5000メートルが14分40秒台で1500メートルも4分0秒台だった。それでも全国高校駅伝予選では2年時に兵庫県大会と近畿大会の1区を走って区間4位と5位。3年時には県大会、近畿大会とも3区を走って4位と2位。どちらかといえば長い距離の方を得意とする選手だった。3年時の5000メートル高校ランキングは300位台だったが、その適性を見た関東の大学からは、もちろん誘いもあった。

「でも、あんまり深くは考えていませんでした。別にどこへ行っても陸上部はあるから陸上を続けられるし、環境によって大きく結果が変わってくることもないだろうと考えていたので。それにもともと、僕は勉強も好きだったので、国公立の大学へ行きたいなと思っていて。東京大にいくまでの学力はなかったから京都大へ、となった感じです」

 中学時代はサッカーをやっていたが、長距離を走るのも好きだった。実際に走ってみると勝つこともあり、楽しくなり、高校へ入ってから本格的に長距離を始めた。だから、大学へ進んでも、学生の部活動として陸上競技を続けていこうと思っていただけだった。

普段はひとりで練習

日本学生陸上競技個人選手権でも、平井(中央)は箱根経験者を抑えて2位に入った 【写真:アフロスポーツ】

 だが、京都大の陸上競技部に入ってみると、練習内容に驚いた。高校時代はキッチリと練習をしていただけに、「こんな感じでやっているんだ。すごく緩い感じだな」と思った。以来、ひとりで練習することが多くなった。

「初出場だった去年の日本インカレは、5000メートルが13位で1万メートルが15位でした。何とも悔しくて、次は8位以内に入ってポイントを取りたいと思ったんです。それを目標にしていたから、(昨年の)10月末に1万メートルで28分57秒20が出せたんだと思います。それから路線は変わりませんが、ペース設定など(練習の)質と量はすごく増えました。基本は高校時代にやっていたことをベースにして、日々自分の体調に合わせて微調整をしながらやっています」

 他の選手と一緒に練習するのは駅伝の前の1〜2回だけ。「だから、みんなと一緒に練習するのは年に4回くらいです」と笑みを浮かべる。駅伝主将になった今年は、まとまって練習をするチームメートの練習メニューを考えたりしているという。
「他の大学へ練習に行ったり、実業団の合宿にも参加させてもらうようになって、キッチリと結果も出てきたので『これは3位もいけるかもしれない』と思い、6月ごろには目標を3位に上げました」

 例年のリザルトを見て、28分50秒くらいで3位になれると想定した。しかし、本番では気温が高いにもかかわらず、前半のペースが予想以上に速かった。それでも、キトニーが行ったらついていかなければと思った。「速すぎることへの怖さはあったけれど、そこはもう失うものもないので練習を信じていくしかないと思って、腹をくくりました」と言って笑顔を見せる。その積極的な走りが大幅な自己記録更新を生み出した。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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