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実録…ビアンキ事故発生から深夜まで
唯一病院に入った記者が明かす混乱の現場

アイルトン・セナの事故死から20年

日本GPの決勝前、笑顔を見せるビアンキ。深刻な状況に変わりはないが、今はただ、彼の頑張りを信じたい
日本GPの決勝前、笑顔を見せるビアンキ。深刻な状況に変わりはないが、今はただ、彼の頑張りを信じたい【Getty Images】

 映画『RUSH』の冒頭シーンに、F1とは毎年1、2人の死亡者が出るスポーツだと紹介されていた。だが、映画で描かれた1970年代から大きく変化し、94年のサンマリノGPで亡くなった、ローランド・ラッツェンバーガー、アイルトン・セナの事故以来、F1は飛躍的に安全性が向上した。それ以降、大きなクラッシュは何度もあったが、死亡事故は発生していない。


 しかし……。セナが亡くなって20年、多くの関係者がF1こそ世界で一番安全なモータースポーツだと感じている中、ジュール・ビアンキの事故が起きた。事故発生から48時間以上が過ぎ、現在、ビアンキは三重県立総合医療センターの集中治療室にて治療を受けている。そこへミハエル・シューマッハのスキー事故における治療とアドバイスを担当した神経外科医のジェラード・サイヤン博士が来日し、フェラーリはローマ大学の神経外科医、アレッサンドロ・フラッチ教授を呼び寄せた。


 誰もがセナの悲劇を繰り返したくないと行動している。今後、ビアンキの治療等については、少しずつだが情報が開示されていくだろう。ここでは、筆者が目の当たりにした、事故発生から深夜にFIA(国際自動車連盟)が病院前で行った囲み会見までの状況をまとめたい。

ビアンキはマシンコントロールを失い、撤去作業中の重機に激突。直後に三重県立総合医療センターに搬送され、緊急手術を受けた
ビアンキはマシンコントロールを失い、撤去作業中の重機に激突。直後に三重県立総合医療センターに搬送され、緊急手術を受けた【アフロスポーツ】

 最初に多くのメディアがビアンキの深刻な状態を知ったのは、日曜日の20時17分にプレスルームで行われたFIAによる発表だった。ここで、ビアンキが三重県立総合医療センターに搬送されたことをはじめ、いくつかの情報が明らかになった。CTスキャンによる診断の結果、頭部にダメージを受けていて、緊急手術を行っていること。事故発生当時、鈴鹿サーキットのオフィシャルは、手前の区間でいつでも停止が可能な速度で走行することを指示するダブルイエローフラッグを振っていたこと。ビアンキのマシンはクレーンが付いたトラクターの後部にぶつかったこと。今後の治療等の状況は病院から情報が発表されることなど。


 レース終了後、チーム関係者は病院へ直行していたが、次のロシアGPは連戦のため、通常より過密スケジュールに追われ、メディアを含め、多くの関係者は、事故そのものについては理解していたものの、記者は執筆に追われ、カメラマンは写真のアップロードなどに追われていた。だが、レース終了後2時間ほどが過ぎ、なかなかオフィシャルリザルトが出ない中、大破したマシンの写真が出回ると、メディア関係者にも緊迫した雰囲気が広がっていた。それでも、国際映像にクラッシュシーンが映らなかったことで、どのようにクラッシュしたのかを知る人はほとんどなく、「スピンして後部からトラクターにぶつかったのでは?」「いや、前から潜り込むようにしてぶつかったらしい」「先に重傷のマーシャルがヘリコプターで運ばれたらしい」といった具合に、憶測によるものばかりが語られていた。


 そして20時17分に突然、FIAのメディア担当者がプレスルーム内でマイクを片手に、配布する予定のリリースを読み上げた。プレスルーム内での読み上げ後、FIAメディア担当はテレビクルーが待つパドックへと移動して、同じようにリリースを読み上げた。このとき、イギリス・BBCなどは担当者が手にしていたリリースを撮影し、ツイッターにアップしたことで、ファンを含め、世界中の人がビアンキの深刻な状態を知ることとなった。

病院に駆けつけるメディアとファン

 筆者は他のスタッフとともに、21時前後に東京へ向けてクルマ移動する予定だったが、高速道路に混雑があると先にプレスルームを出た他媒体の連絡を受け、「それならば病院に立ち寄ってみよう」と三重県立総合医療センターへと向かった。病院へ到着すると、すでに複数のテレビメディアは到着していて、さらに6名ほどの一般ファンがいた。ファンはツイッターで入院先を知ったという。その後も、メディアとファンが少しずつではあるが、集まりだしていた。


 三重県立総合医療センターは443床を誇る三重県を代表する総合病院で、各都道府県に1つの基幹災害医療センターにも指定されており、ドクターヘリの離着陸場所が確保されている。一部、海外メディアでは田舎の病院に運ばれたという誤報があったが、災害医療などにも対応できる高度かつ大規模な総合病院である。


 だが、そうした情報も当然現地では把握できておらず、暗い、夜間出入り口である救急受付の前に、各国のテレビクルーとファンが、ただただ、外で待っている状態となっていた。そこには鈴鹿サーキットの担当者も1人来ていた。徐々に増えてきたメディアとファンに対して、病院側からは「静かにしてほしい、喫煙場所を守ってほしい」等の要請があった。一方、テレビクルーたちからも「FIAは今後病院側から発表があると言っていた。いつ、どのような形で病院側は発表を考えているのかを教えてほしい」という要望が出ていて、22時を過ぎたあたりに、鈴鹿サーキットの担当者が病院担当者と話し合いを行うことが決まった。

田口浩次

スポナビDo

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