「競馬」に加われなかった日本勢=奥野庸介の凱旋門賞回顧

JRA-VAN

トレヴ連覇、陣営の努力とジャルネの好騎乗

トレヴが凱旋門賞を連覇、牝馬では77年ぶり史上2頭目という大偉業となった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 日本を代表する3頭をしても凱旋門賞には手が届かなかった。勝ったトレヴは3番枠という好枠を生かし、前半は先行勢の作る緩みのない流れに乗って内ラチ沿いでじっと我慢。昨年はフォルスストレートから捲って、内に向かって一気にスパートをかけての大勝だったが、今年は仕掛けのタイミングを心もち遅らせて末脚を温存。仮柵が外されたグリーンベルトの上を通って、猛追するフリントシャーを2馬身突き放し、アレッジド以来、36年ぶりの連覇を達成。牝馬としては凱旋門賞がまだ黎明期だった時代の名牝コリーダ(1936年の4歳時と37年の5歳時に連覇)以来、実に77年ぶり、史上2頭目という大偉業を成し遂げた。

 昨年の5馬身差圧勝で世界の最高峰に登ったトレヴだったが、今年は結果を出せずに3連敗。春に背中を痛めて夏場を全休し、前哨戦のヴェルメイユ賞でも最後の伸びを欠いて4着に敗退と春先の前売り1番人気馬は徐々に後退、レース当日は単勝15.4倍の7番人気にまで評価を下げていた。勝因は短い期間で能力を発揮できる状態にまで戻した陣営の努力と、この馬が持つポテンシャルにあろうが、コースを熟知し、手の合うジャルネ騎手の好騎乗も優勝を引き寄せる原動力となった。

前半タイトな流れ、これが勝負の明暗

ハープスターは猛然と追い上げたものの末脚届かず6着 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 日本馬は直線追い上げたハープスターが勝ち馬から約4馬身半差の6着、果敢に内を突いたジャスタウェイはドバイで世界を驚愕させた豪脚が見られず8着まで。出遅れて最後方から直線横一線に開いた大外を通ったゴールドシップは良いところなく14着に終わった。

 ディープインパクトでさえ、押し出されて先行したように、欧州競馬は途中まではスローで、各馬は前に壁を置きながら勝負どころで一斉にペースを上げる。しかし、横一線ムードでチャンスのありそうな馬が多かった今年は前半もタイトに流れ、これが勝負の明暗を分けた。

ジャスタウェイもドバイで世界を震撼させた豪脚を見せることはできなかった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 末脚に自信を持っていた3頭は後方に置き去りにされ、欧州馬が先で繰り広げる「競馬」に加わることができなかった。上位を争った馬たちがアクセルを踏み込んだ地点をジェットコースターが真っ逆さまに落下する頂点とするなら、日本勢はこれに大きく遅れを取った。今回は能力の差で負けたのではなく、アウェーの競馬にアジャストできなかった結果と理解すべきだろう。

2着フリントシャーも内枠と騎手の腕

 2着に善戦したフリントシャーも内枠(4番枠)と騎手の腕がものを言った。M.ギュイヨン騎手はヴェルメイユ賞でもバルチックバロネスを最内に導いて勝利をもぎ取ったように、いつも迷うことなく内を狙ってくる。発表は良馬場だったが、当日の芝は微妙で、1番人気で3着したタグルーダには重く、大外枠から出て、4着に健闘したキングストンヒルには逆に軽すぎたようだ。

(文:奥野庸介)
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