錦織、重圧はねのけ涙の2度目V=楽天ジャパンOP

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満身創痍でつかんだ栄冠

フルセットの死闘を制して2週連続のツアー優勝を果たした錦織 【末永裕樹】

 長く厳しい戦いだった。5日に行われた楽天ジャパンオープンテニスの男子シングルス決勝。前週からの疲れ、腰の痛みが体を重くし、ミスが目立ち始め、いら立ちがつのり……どうしても負けられないフルセットの勝負を、やっとの思いで乗り切った錦織圭(日清食品)は、コートに大の字になって感情を鎮めた。そこから流れた涙が、全米オープンからここまでの重圧を物語っていた。

「信じられないくらいうれしくて、涙も出てしまいました」

 戦前はミロシュ・ラオニッチ(カナダ)が有利と思われていた。武器のビッグサーブを散りばめながら好調に勝ち上がってきた上に、錦織は前週のマレーシア・オープンで4試合をこなしており、この大会の準々決勝からはトレーナーに臀部(でんぶ)のマッサージを受けながらの戦いだったからだ。

 ラオニッチの時速228キロのサーブで始まった第1セット。ノータッチエースだけでも10本と、いかにもラオニッチ・ペースだ。これまでは要所に限定して飛ばしてきた時速220キロ台のファーストサーブを、立て続けに浴びせて圧倒してきた。このセット、ラオニッチの6度のサービスゲームで錦織が奪ったポイントはわずかに5。しかし、逆に錦織のサービスゲームで与えたポイントはさらに少ない4ポイントだった。
 自分のサービスゲームに集中しながらわずかなチャンスを待つ……ともにブレークポイントのないままに迎えたタイブレークに、その作戦が的中した。

「あんなすごいサーブが打てるだろうかと思っていました。『すごいサーブでもあきらめるな、1度か2度しかないチャンスを逃さないように』というコーチのアドバイスがありました」(錦織)

 最初のポイントでセカンドサーブから打ち合い、フォアハンドをダウンザラインに通したミニブレークが大きい。ミニブレークの応酬があったものの、気持ちの上では錦織が優位だった。イーブンで迎えた6−5からの12ポイント目、最初のセットポイントで、時速223キロのファーストサーブのリターンに集中し、フォアのウイナーをクロスに決めた。

ファイナルセットはデッドヒートに

今大会の優勝で、年間トップ8によるツアーファイナル参戦への道も大きく開けてきた 【末永裕樹】

 錦織はこの後、セットの合間にトレーナーを呼んでマッサージを受けている。しかし、第1セットを奪ったことでモチベーションが上がった。第2セットに入ると、ラオニッチはミスが目立ち始め、一方の錦織も故障の影響だろう、集中力が途切れがちという不安定な流れ。錦織は第7ゲームをサービスブレークされてこのセットを落とすが、5本のブレークポイントの中の4本までをセーブした頑張りが大きく、それがファイナルセットに希望をつないだ。

 ラオニッチのサーブは確かに強力だ。しかし試合が長引けば徐々にでも威力は落ち慣れも出る。ファイナルセットでは、今度は錦織が5本のブレークポイントを握り、ラオニッチが4本までしのぐというデッドヒートになった。しかし、ファイナルセットの1ブレークは命取りだ。錦織は5−4からのリターン・ゲームで0−40のチャンスを生かし、2本目のマッチポイントで2年ぶり2度目の優勝を決めた。

 全米オープンの準優勝から臨んだアジア・シリーズで2週連続の優勝。年間トップ8によるツアーファイナル参戦への道が大きく開けてきた。

(文:武田薫)
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