“未完の大器”大田泰示が示す確かな成長……感じる次なる「可能性」
ポストシーズンでの活躍が今後の大田を左右する?
しかし、同年のポストシーズンのメンバーから外れると、飛躍を誓ったはずの昨季は21試合出場で31打数5安打の打率1割6分1厘、0本塁打、2打点と前年度よりも成績が下降。わずかに残っていたポストシーズンでのベンチ入りの可能性も、自転車で練習へ向かう途中に転倒してけがを負って消滅。膨らんでいた期待はあっけなく萎み、オフには背番号55を剥奪される形で44に変更となった。そんな中で迎えた今季、その堂々たる立ち姿は以前よりもたくましく見える。
仁志氏は言う。
「今は本人もまだいろいろと模索中だと思います。持っているポテンシャルが高いのは間違いない。そのポテンシャルをどう生かすか。それはプロ野球選手全員の課題ですし、自分の力をどう生かしていくかは自分自身がどうするかに懸かっています。ただ、9月に入って彼がチームの良いアクセントになっていることは確かですし、ポストシーズンでも原監督は有効に起用すると思います。ラッキーボーイ的な選手は計算して出てくるものじゃないですが、ポストシーズンで彼がラッキーボーイになれればチームとしては大きいですし、彼自身の今後のステップアップのためにも良いキッカケになるはずです」
待たれる「覚醒のとき」、日本シリーズで爆発なるか
「個人としてうれしいことはありましたけど、リーグ優勝のときも1軍にいなくて、その後にメンバーから外れたのが一番悔しかった。優勝しても試合に出ているのと出ていないのではぜんぜん違ってくる。今度は自分が試合に出て日本一を経験したい」
今季のリーグ優勝決定の瞬間は、途中出場ながらグラウンドの上で迎えた。あとは、日本一。プロ通算4本塁打の大田だが、自身がホームランを打った試合は過去4戦全勝というデータもある。若さと躍動感あふれるプレーは、今後の戦いの中でラッキーボーイとなる可能性を十二分に感じさせる。
優勝直後のインタビューで「本当に長くて険しく、大変なシーズンとなりました」と振り返った原監督。例年以上に苦労の多かったペナントレースではあったが、苦しかった分、CS、そして日本シリーズではスカッと勝ちたい。ファン、そして監督自身が「覚醒のとき」を待ち続ける男が爆発すれば、その希望は叶えられるはずだ。
(取材・文:三和直樹/ベースボール・タイムズ)