“未完の大器”大田泰示が示す確かな成長……感じる次なる「可能性」

ベースボール・タイムズ

ポストシーズンでの活躍が今後の大田を左右する?

篠塚、仁志の両氏が認めるポテンシャルの高さ。CS、日本シリーズの戦いを経験することで、その生かし方を身につければ「覚醒のとき」はそう遠くないかもしれない 【写真は共同】

 未来の4番として大きな期待を受け、入団時には“ゴジラ”松井秀喜氏の背番号55を託された大田。4年目の12年には、リーグ優勝決定後にプロ初本塁打から2試合連発弾を放つなど、計21試合に出場して63打数16安打の打率2割5分4厘、2本塁打、7打点をマーク。東京ドームのお立ち台にも立ち、「覚醒」の2文字が新聞紙上に躍った。

 しかし、同年のポストシーズンのメンバーから外れると、飛躍を誓ったはずの昨季は21試合出場で31打数5安打の打率1割6分1厘、0本塁打、2打点と前年度よりも成績が下降。わずかに残っていたポストシーズンでのベンチ入りの可能性も、自転車で練習へ向かう途中に転倒してけがを負って消滅。膨らんでいた期待はあっけなく萎み、オフには背番号55を剥奪される形で44に変更となった。そんな中で迎えた今季、その堂々たる立ち姿は以前よりもたくましく見える。

 仁志氏は言う。
「今は本人もまだいろいろと模索中だと思います。持っているポテンシャルが高いのは間違いない。そのポテンシャルをどう生かすか。それはプロ野球選手全員の課題ですし、自分の力をどう生かしていくかは自分自身がどうするかに懸かっています。ただ、9月に入って彼がチームの良いアクセントになっていることは確かですし、ポストシーズンでも原監督は有効に起用すると思います。ラッキーボーイ的な選手は計算して出てくるものじゃないですが、ポストシーズンで彼がラッキーボーイになれればチームとしては大きいですし、彼自身の今後のステップアップのためにも良いキッカケになるはずです」

待たれる「覚醒のとき」、日本シリーズで爆発なるか

 日本一に輝いた2年前のシーズン。当時の大田は、自らをこう振り返っていた。
「個人としてうれしいことはありましたけど、リーグ優勝のときも1軍にいなくて、その後にメンバーから外れたのが一番悔しかった。優勝しても試合に出ているのと出ていないのではぜんぜん違ってくる。今度は自分が試合に出て日本一を経験したい」

 今季のリーグ優勝決定の瞬間は、途中出場ながらグラウンドの上で迎えた。あとは、日本一。プロ通算4本塁打の大田だが、自身がホームランを打った試合は過去4戦全勝というデータもある。若さと躍動感あふれるプレーは、今後の戦いの中でラッキーボーイとなる可能性を十二分に感じさせる。

 優勝直後のインタビューで「本当に長くて険しく、大変なシーズンとなりました」と振り返った原監督。例年以上に苦労の多かったペナントレースではあったが、苦しかった分、CS、そして日本シリーズではスカッと勝ちたい。ファン、そして監督自身が「覚醒のとき」を待ち続ける男が爆発すれば、その希望は叶えられるはずだ。

(取材・文:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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