トゥエンテ宮市亮が陥っているジレンマ
求められる結果とコンディションの向上

スタミナ切れと膝の負傷で交代

2試合連続で先発出場を果たした宮市(右)。しかし、スタミナ切れと膝の負傷により53分にベンチへ退いた
2試合連続で先発出場を果たした宮市(右)。しかし、スタミナ切れと膝の負傷により53分にベンチへ退いた【VI-Images via Getty Images】

 トゥエンテの宮市亮は28日のユトレヒト戦に出場したが、スタミナ切れと膝の負傷が重なり53分でベンチに退いた。チームは3−1で勝ち、順位を一つ上げ5位になった。


 1週間前のヘラクレス戦(4−1でトゥエンテの勝利)で宮市は今季初先発したものの、全く良いところなく68分でベンチに退いた。このとき、彼は「自分に腹が立つ」と語っていた。


 あの試合に比べれば、ユトレヒト戦の宮市は試合に参加している時間帯があった。


「試合前は『開始20分は早くプレスに行ってくれ』と言われていたので、それだけは意識し、あとはセカンドボールをできるだけ拾うというのがチームとしての“あれ(コンセンサス)”だったので、何とかそこまでは頑張ってやろうとした」


 1対1の仕掛けも心がけ、5分にはカイル・エベシリオが決めた先制ゴールにつながるファウルを得た。積極的なフリーランニングでゴール前に顔を出し続けた。14分のシュートは打ち損なったが、それでも、このまま時間が進んでいけば宮市のエンジンはさらに温まっていくだろうと思われた。


 しかし、17分、相手DFのパスミスをカットし、ルク・カスタイニョスにパスを出しのを最後に、宮市のパフォーマンスが下がっていった。


「時計を見たらまだ25分か、あと20分ある、やべえみたいな」


 早くも宮市はバテていた。だから、後半開始早々、宮市のパフォーマンスが若干持ち直したのも納得できた。15分間のハーフタイムでガスを蓄え直したのである。しかし、今度は相手のボールを奪いに行った際に自分と敵の膝がぶつかって足をひきずり出した。すでに宮市は首脳陣に疲労を伝えていたのでベンチの対応も早く、53分にユネス・モフタルと交代した。

スプリントの本数が足りない

 4日のトゥエンテ入団記者会見で宮市は「(コンディションは)すごく良い状態。プロになってからいまが一番いいんじゃないかというぐらい良い。実戦の場で、どれだけそれを発揮できるか、頑張っていきたいです」と力強く語っていた。しかし、オランダリーグ3試合、KNVBカップ1試合と公式戦4試合を戦った今季を振り返ると、まだ宮市はフルパフォーマンスを発揮するだけのコンディションには戻っていない。


「リハビリの時に体の感覚はいい状態だった。先週、『練習の時には結構良いキレが戻って来ていると思う』と言ったんですけど、やっぱり実戦になると自分が期待していたものと違って、自分に腹立たしさというものがあった。それは、そんな簡単に手に入るもんじゃないと思うし、もっともっと苦労してやっていかないといけない。突きつけられている壁だと思う」


 具体的に足りていないことの一つがスプリントの本数だ。ユトレヒト戦の前半半ばから、相手右サイドバックのマルク・ファン・デル・マーレルのオーバーラップに付いて守備をした後、宮市は自陣から敵陣に駆け上がっていけないことがしばしばあった。


「守備に戻って再び攻撃に行くという時に 、ボールをはたいて追い越していくところがまだまだ体力的にできないところが何度かあった。追い越したいと思ったんですけど、追い越せないみたいな。そこは歯がゆいところ。昔はもっとバンバン、スプリントしてたと思うんですけど。(スプリントの)速さ自体は落ちてないんですけど、本数が足りていない」

試合勘を取り戻すことの大変さ

 ここ2シーズン、選手層の厚さやけがもあって失った試合勘を取り戻すことの大変さ、それを今、宮市は痛感している。


「(高校時代にたくさん試合を重ねた直後、フェイエノールトでプレーをしたとき)勢いは本当にあったと思います。今は、試合に出られないことがこんなに変わるものなのかと。正直、(アーセナルの)高い環境で練習をやれているし、リザーブ(リーグ)でも何試合か出てたんですけど、そういうのとは全然違うというのを感じられた。実際、(試合勘不足が苦しいとは)聞いてましたけど、実際、やってみて、ああ苦しいなというのがある」


 しかし、けがをして長期戦線離脱していた選手が、すぐに通用するほどプロは甘い世界ではないと諭す人も、宮市の周囲にはいるという。


「長い期間試合に出てなかったのに、いきなり良いプレーをしようなんて、他の選手からしたらね、俺らはずっとやってきてるのに、けがしてた奴にいきなり栄光を勝ち取れるわけねえだろうと。そういうことを、試合を見ていた人に言われた。 彼らは試合に出続けて、サッカーに関わってきた中で、僕なんかはけがでサッカーから離れてた中ですぐに試合に出て結果を残そうなんて、そんな甘いもんじゃない。確かに焦りもあったんですけど、焦ったところでどうにでもなることじゃないし、そこはゆっくりやってくしかないです」


 だが、結果を残さなければ、試合に出る機会が減ってしまい、さらに試合勘を失うというジレンマもある。


「結果を出していかないといけないところと、まだ体力を戻していかないといけないところ。何と言うんですかねえ、早くコンディションを戻したいけど、早くできないというか。ともかく結果を残していかないといけない。そこが今日は残念だった」

 

 早く結果を残すことと、焦らずコンディションを上げていくことの両立に、21歳の頭の中で禅問答が繰り広げられている。

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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