「連覇は当然」のなでしこが残す余力 女子W杯に向けて少しでも上積みを
世界チャンピオンに揺らぎは見られない
初戦の中国戦こそ引き分けたものの、なでしこはグループリーグを首位で通過した 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
アジア大会女子サッカー競技に臨む“なでしこジャパン”の取材を続けながらそんな感覚を持った。発するその言葉に気負いはなく、照れもなく、おそらく意気込みですらなく、「まあ、それは当然のこととして」とでも言うべき感触で、佐々木則夫監督も百戦錬磨の選手たちもサラリと言ってのけるのだ。
連覇へのプレッシャーを問われた佐々木監督が「経験のある選手はこの程度のプレッシャーであがったり、慌てたりすることはありません」と話す表情は「そりゃ当然だろ」とでも言いそうなもので、実際に2011年の女子ワールドカップ(W杯)での優勝を経験している“世界チャンピオンたち”に心理面での揺らぎは見られない。それは初戦で中国に引き分けた後でもそうだった。余力があった。
一方で、同じ質問での回答で「やはり若い選手の緊張感は多いかなと思います」と語っていたのは、今大会のなでしこジャパンを象徴している。佐々木監督はこのアジア大会にDF臼井理恵、DF羽座妃粋、FW増矢理花という3人の選手を初招集している。公式大会に3人もの未経験選手を加える辺りにまず「余力」を感じるのだが、彼女たちを実際に起用しているのもまた「余力」なのだろう。この3人だけでなく、メンバー発表時にキャップ数が「2」しかなかった北原佳奈もセンターバックのレギュラーとして抜てきされた。アジア大会では3試合連続して先発の座を託されている。
アジア大会の位置づけは「次代への投資」
一方で、チームとしての背骨を担う歴戦の勇士たちは健在だ。3年前の女子W杯優勝メンバーであるボランチの阪口夢穂と宮間あやは群を抜く安定感と存在感を見せているし、右サイドの川澄奈穂美もやはりクオリティーが違う。初戦の中国戦で先発したGK海堀あゆみ、センターバックの岩清水梓といったお馴染みの選手たちも、やはり計算できる。
10番を託したFW高瀬愛実が初戦で負傷してしまったのは誤算だったと思うが、それでもこれだけの選手がそろっていると、チームとして「遊ぶ」ことができる。試しながら戦い、少し先を見据えながら選手を起用していくことができていた。