“先駆者”クルム伊達が語るプロの矜持 テニス文化をアジアに根付かせるために
テニスを“文化”として根付かせるために
アジア人には風当たりの強い中でも戦い続けてきたクルム伊達。写真は1996年のジャパンオープンで優勝した時のもの 【写真:ロイター/アフロ】
アジア人初のグランドスラム優勝者となったリーの存在、そして中国の経済成長――それらを背景として、テニス界の勢力図やツアーマップは大きく描きかえられた。特に9月〜10月は“アジアシリーズ”と銘打たれ、今年は5週間の期間中に、アジア地域で9つのトーナメントが開催される。15日から東京で開催される東レ・パンパシフィック・オープン、そして10月6日から大阪で開かれるジャパン・ウィメンズオープンも、そのアジアシリーズの一環だ。
では、そのように世界の目がアジアに向く中で、テニスを“文化”として根付かせていくために、選手たちは、そしてわれわれは何をしていくべきなのだろうか?
「選手がすべきことは、とにかく最後まで、どんな状況であろうと戦い抜くことだと思います。実際にはこれだけ長いツアーにいると、どうしても日によって調子の良し悪しがあるし、相手との相性もあります。それに審判もいれば観客もいて、自分自身との戦いもある。その中で選手は、例え結果が負けようが、あるいは悪い内容であったとしても、ファイトして戦い切ることが一番大切だと思います。
最近の傾向として試合途中のリタイアが多い気がします。それはどうしようもないこともありますが、基本的には私は、それはプロとしてあってはいけないことではないかと思っています。テニスは対戦相手をリスペクトし、試合が終われば握手するスポーツ。選手がお互いをリスペクトし、最後まで戦い抜く中で筋書きのない物語が生まれ、そこに見る人は感動したり、心を動かされるのだと思います」
タレントがそろう今こそ千載一遇の機会
「選手は全力を尽くしますが、いろいろな条件がそろわないと、パフォーマンスが上がらないという側面もあります。相手が良いプレーをすることも必要になるし、常にベストな試合というのは、なかなかできるものではありません。それはみんなでつくり出すものでもありますし、その結果、感動が生まれるのだと思います」
今、日本のテニス界には錦織圭(日清食品)というスーパースターがいる。“トップ100で最も小さなプレーヤー”である、奈良くるみもいる。そして既に“レジェンド”の粋に達しつつある、クルム伊達公子がいる。
今こそが、テニスを文化として根付かせ次代への種を撒く、千載一遇の機会である。