リオ五輪を見据えたU−21日本代表 2連覇を懸けてアジア競技大会に挑む

川端暁彦

試練のグループリーグ

U−21日本代表は、14日のアジア大会初戦(vs.クウェート)に向け、千葉県内で4日間の合宿を行った 【川端暁彦】

 今回のアジア大会、前述の年齢制限の問題から「格上」とやることは監督も選手も覚悟していたはず。ただそれにしても、グループリーグの組み合わせはなかなか厳しい。初戦の相手である中東の伝統国・クウェートとは今年1月のU−22アジアカップ(オーバーエイジがないことを除くと、今回と同様の年齢制限)で対戦しているが、そのときはスコアレスドロー。所属クラブとの綱引きの結果、ベストメンバーの招集はできなかったという情報もあるが、強敵には違いない。

 そして、第2戦の相手はイラク。こちらもU−22アジアカップで対戦しているが、そのときは0−1での敗戦だった(イラクは準決勝で韓国、決勝でサウジアラビアを破って大会を制覇)。しかもスコア以上の完敗といえる内容で、「あのときは引いて守るしか手がなかった」(MF原川力=愛媛FC)ほど。選手たちも「イラクは他のアジアのチームと比べても断然レベルが高い」(DF植田直通=鹿島アントラーズ)、「イラクは正直、すごく強かった」(MF吉野恭平=サンフレッチェ広島)、「フィジカルコンディションでも技術的にも向こうが上だった」(FW鈴木武蔵=アルビレックス新潟)と警戒を強めている。

 イラクとは2年前のAFC・U−19選手権準々決勝でも対戦しており、このときも1−2で競り負けた。勝てばU−20W杯の出場権が手に入るというシチュエーションでの敗退は、選手たちに大きな悔恨の記憶として残っている。逆に言えば、五輪のアジア予選を考えたときに、ここで苦手意識をなくしておきたい相手ではある。鈴木は「ここでイラクが入ってきたということは、自分たちに試練を与えてくれたのだと思っている。1月よりも自分たちが成長していることを試す場になった」と熱く語ってくれた。確かに中途半端に弱い国と同居して緊張感のないゲームの繰り返しとなるよりは、「強化」につながるグループ分けと言えそうだ。

「準備の大会」ではなく「勝負の大会」

A代表と同じ4−3−3の布陣で全日本大学選抜とのトレーニングマッチに臨んだU−21日本代表だったが、システムが機能せずスコアレスドローに終わった 【川端暁彦】

 第3戦で当たるネパールの情報はJFAにもほとんどないそうだが、各年代での結果を見ても力的には少し落ちる相手となりそうだ。最後の対戦なので十分にスカウティングができるというポジティブな材料もある。現実的に考えれば、クウェートとの初戦がグループリーグ突破に向けて最もウェイトが重い試合と言えるだろう。手倉森監督も「あまり初戦が大事だ大事だと言い過ぎて、意識し過ぎてしまうのは良くない」としつつも、「W杯の結果を見ても、初戦の重要性は明らか」と語る。

 大会前最後の準備試合となった10日の全日本大学選抜とのトレーニングマッチは、A代表と同じ4−3−3の布陣が機能せず、0−0のスコアレスドローに終わった。内容的にも褒められるものではなかっただけに、初戦に向けての布陣変更もあるかもしれない。練習では植田、西野貴治(ガンバ大阪)、岩波拓也(ヴィッセル神戸)の3人のセンターバックを並べた3−4−3システムもテストしており、中東の強力FWに対抗するためにも一つの選択肢と言えそうだ。3人全員が185センチを超える長身選手であり、いずれもJ1クラブでレギュラーを張っている選手たち。甲乙付け難く、A代表を狙えるポテンシャルを持つ彼ら全員を使えるというのも3バック採用時のメリットだろう。

 このU−21日本代表にとってのメインターゲットは、2年後のリオ五輪。「独特の雰囲気がある選手村に滞在することを含めて、五輪に向けた重要なシミュレーション」(手倉森監督)となる。ただ、五輪に向けた「準備の大会」というニュアンスを強めすぎて、「勝負の大会」としての意味を薄める気はさらさらない。指揮官は「次世代に対して、日本がアジアでNo.1で居続けるということを示したい」と断言。選手たちにもその意は伝わっている。年下のチームで参加するのだからというエクスキューズへ逃げる気はない。U−21日本代表が狙うはあくまで、2大会連続の金メダルである。

2/2ページ

著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント