「母体のレベルを上げることが僕の仕事」 強化育成担当に聞く 卓球・村上恭和監督
だんだん近づいてきた中国の背中
若手選手の相次ぐ活躍の陰には、幼いころから活躍し続ける福原の存在があると、村上監督は分析する 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
12週間から16週間は海外で(試合を)やりますね。
――村上監督はこの試合数をどう感じていますか?
これは国際卓球連盟の方針ですから。大会でポイントを稼ぐことで、世界ランキングが上下するのですが、それによって五輪の出場が決まります。ですから、「私は出ない」というわけにはいきません。世界中でたくさんの大会が行われています。でも、協会の発展のためにはすごく意義のあることです。世界中で大会をやっている競技ほど普及は早いですから。
ただ、中国は出場する大会が少ないんですよ。年間8大会ほどしか出ていません。それでも、出場した大会で常に優勝するから、世界ランキングのトップ10に6人もランクインさせることができる。日本も力をつければ、そこまで(多くの試合に)出場する必要もなくなります。
――監督就任から6年がたちました。ロンドン五輪を経て、五輪でメダルを獲得するためのモデルケースができたと思いますが、この経験を今後、中国や世界の強豪国に勝つためどう生かしていきたいですか?
近年は中国のNTに勝ったことはありません。ただ、これまでは他国に帰化した中国人選手にもなかなか勝てませんでしたが、だんだん追いついてきました。
日本は少しずつ自信をつけてきました。コーチを中国人コーチにしたり、練習相手を中国選手にしたりして。本国の中国代表以外には勝てるようになってきているので、そこを詰めていけば、今度は本国に勝てるようになるのではないかと思います。
後進躍進の陰に福原の存在
大体は足りていますが、総競技人口、総合環境では負けています。中国はおよそ、日本の100倍の強化予算、100倍のプロのコーチ数がいます。ここが一番の違いです。
――限られた中で、勝ち続ける方法を模索していくということですか?
そうですね。良い素質を持った子を早く見極めて、その子に集中投資して中国と同じような環境を用意して……。少数精鋭ですよね。そういうことをやっていかないとダメだと思いますね。
――後進がどんどんと頭角を現していますが、その要因は何だと思いますか?
福原の登場が一番大きいですね。アテネ五輪に出て、活躍してテレビに出るようになり、卓球選手がスポーツの中で少しずつメジャーになり始めた。そうしたら、周りも「自分も頑張れば有名選手になれるかもしれない」「卓球って面白そう」と思ってくれたんです。それで頑張ってこれまできました。
中国も同じ歴史をたどっているんですよ。1950年代は日本に勝てずに、ずっとダメだと言われ続けていたのが、少しづつ国民が支持を始めてどんどん渦が起きて、いまや中国国内で1億人が卓球をやるようになったわけです。(日本も)一度王者になってしまえば、一気に広まって、今度は中国が追いつけないぐらいになるかもしれませんね。