仁志敏久が小学生と世界で戦い感じたこと=侍ジャパン12U代表監督・手記
12U選手のプレーに原点を思い返した
12U代表監督を務めた仁志敏久氏が世界で戦って感じたこと、伝えたかったことを語ってくれた 【Getty Images】
プレー動画からの(日本代表メンバーの)選出という画期的な方法から始まったチーム作り。大会期間が夏休み終盤、または学校が始まってしまっている時期での開催ということもあり、応募に戸惑った指導者、親御さんが多かったのではないかと思います。また、動画の撮り方においてもうまくいかなかったという方々も多かったはず。事実、応募された中には、肝心なところが撮れていない、画質が悪くて見えにくいというものも少なくはありませんでした。一般からの選出は6人と予想よりも多くはなりましたが、地方(連盟)からの推薦選手も含めて、(選出)方法を徹底することで今後より高いレベルでの選出ができるのではないかと感じています。
選ばれたのは15人。少ない人数の中での5連戦と、ピッチャーの球数制限。球数に関しては詳細にルールが決められているため、余裕のある試合であってもやり繰りが必要でした。やったことがない、本来ならやりたくないというポジションをこなした選手もいるでしょう。戸惑いながらも選手たちは一生懸命対応しようと努力してくれました。慣れないポジションでのファインプレーもありました。彼らのひたむきなプレースタイルは私にとって原点を思い返すいい機会ともなりました。野球への純粋な思いはいつまでも変わらない、変えてはいけないものなのだと、あらためて感じさせられました。
伝えたかった、考えてプレーすることの大事さ
例えば、打席に入る前に状況、狙い球や注意点を整理しておく。守っているときも同様に準備をする。また、フライなどの場合に自分が捕る意思を示すだけでなく、誰が捕るのかを指示するなど。自ら発想し、自ら行動するということをテーマに挙げました。「ああしなさい」「こうしなさい」では、なぜそうしているのかも考えずに、ただ言われたことをやっているだけになってしまい、後々振り返っても何も残りません。失敗をしても成功をしても、なぜその結果になったのかの理由が分かれば、次に生きます。何をしたのかだけではなく、なぜそうしたのかも重要なポイントだと思うからです。
結局、選手に考えさせるということは、選手を信じることとともに、その答えを指導者が明確に持っていなければならないということでもあります。相手が子供たちですから、われわれが想像もしなかったような答えを出す可能性もあります。中にはなぜそうしたのかを聞かれて嘘をつく子もいるでしょう。それでも言葉を信用するしかありません。大人が先回りをし過ぎては、子供は何もしなくなってしまいます。どうするのか? どうすべきなのか? 子供たちに投げかけながら私自身も自問自答を繰り返していました。