ノーゴールでは終われないベネズエラ戦 注目はオーガナイザー柴崎のパスワーク

北條聡

5人が入れ替わる先発メンバーは?

1トップで出場する見込みの大迫。昨季まで一緒にプレーしていた柴崎とのホットラインに期待 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 そこで、ベネズエラ戦である。

 アギーレは2つのテストマッチを通じて、すべての選手を使いたい意向を口にしている。ウルグアイ戦では皆川と坂井をスタメンに選び、約2年半ぶりに代表復帰を果たした田中順也をインサイドハーフで先発させ、さらに後半途中からは武藤と森岡亮太を投入した。実績に乏しい皆川、坂井、武藤、森岡の初代表組を使うことに、少しのためらいもなかった。

 実際、記者会見ではウルグアイ戦の先発から「5人は入れ替わる」と明言している。初陣で出場機会のなかった大迫勇也が1トップに入り、約6年半ぶりに代表へカムバックした水本裕貴がCBの一角を担うことになりそうだ。さらにウルグアイ戦で途中出場した柿谷曜一朗が3トップの左、酒井高徳が右SBとして先発する見込みで、初代表の一人である右SBの松原健が交代出場する流れだろうか。

 そして「5人目」が、注目の柴崎岳である。

 左インサイドハーフでの先発出場が濃厚だ。ウルグアイ戦のスタメンと比べると、この柴崎を含め、フィジカルよりも技術とアイディアに優れた面々が少なくない。ベネズエラが相手なら、各々の持ち味を発揮しやすいとの見立てだろうか。別の言い方をすれば、ノーゴールで終わるわけにはいかない相手でもある。卓越したパスワークと崩しのアイデアを豊富に取りそろえる柴崎の才能が必要とされるゲームと言っていい。

 歴代の日本代表で言えば、名波浩や遠藤保仁の系譜に連なるオーガナイザーだが、今季のJ1では積極的にアタッキングゾーンへ侵入してゴールを重ねるなど、パサーという枠組みを超えて新境地を開拓しつつある。その意味で1トップの背後につけるインサイドハーフの役どころは興味深い。売り物の多彩なパスワークに加え、フィニッシュに絡む仕事も期待していい。アンカーの森重が後方に控える新システムと、昨季まで所属の鹿島アントラーズで一緒にプレーしていた大迫が前方で待つメンバー構成は、追い風だろう。

新風を吹き込むのは誰か

 2試合連続のスタメンは3トップの右を担う本田圭佑、右インサイドハーフの細貝萌、アンカーの森重、左SBの長友、右CBの吉田麻也、GK川島永嗣の6人か。もっとも、各選手の競争心をあおるようなアギーレの積極的な選手起用を思えば、彼らの地位とて安泰ではないかもしれない。

 4−3−3を軸にした可変システムから最終的に4−4−2(4−2−4)へシフトしたように、複数の役割やポジションを兼ねるフレキシブルな力量を備えた人材に大きなチャンスがめぐって来るのではないか。初代表に臆することなく、自身の値打ちをアピールした皆川や武藤らニューフェイスの突き上げが、アギーレジャパンのポテンシャルを引き上げていくことになる。ベネズエラ戦で、日本代表に新風を吹き込むのは誰か。チャンスを鷲づかみにする握力の強さが問われている。

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著者プロフィール

週刊サッカーマガジン元編集長。早大卒。J元年の93年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。以来、サッカー畑一筋。昨年10月末に退社し、現在はフリーランス。著書に『サカマガイズム』、名波浩氏との共著に『正しいバルサの目指し方』(以上、ベースボール・マガジン社)、二宮寿朗氏との共著に『勝つ準備』(実業之日本社)がある。

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