“無冠の女王”ウォズニアッキが決勝へ=全米オープンテニス

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“無冠の女王”ウォズニアッキが決勝進出を決めた 【Getty Images】

 全米オープンテニス(米国・ニューヨーク)は現地時間5日、女子シングルス準決勝の2試合が行われ、キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)が5年ぶり2度目、また地元・米国のセリーナ・ウィリアムズは4年連続8度目の決勝進出を決めた。決勝は現地時間7日に行われる。なお、2人の対戦はこれまでセリーナが8勝1敗でリードしている。

立ち上がりから激しい攻め合いに

 ウォズニアッキは我慢して我慢して、壁を突き破った。シューアイ・ペン(中国)はランキングこそ39位と低いが、粘り強さと鉄壁の守りに定評がある。ウォズニアッキが「北欧の壁」なら、こちらはまさに「万里の長城」。立ち上がりから激しい攻め合いだ。

 快晴の昼下がりは風が強く、ウォズニアッキがやや、やり難そう。ファーストサーブが入らないと、ペンはセカンドから強烈なリターンで脅しをかける。この大会でバックハンドからの攻撃に自信をつけており、ラリー戦での力の出し入れはペンが一枚上手。揺さぶってからバックハンドのダウンザラインに再三ウイナーを飛ばした。
 第1セットは互いにブレークポイントを与えず、サービスキープして3−3。ペンが第7ゲームにバックハンドのクロス、バックハンドのダウンザラインを決めて均衡を破ったが、ウォズニアッキも引き下がらない。持ち前のフォアハンドを強く深くつなぎ、長いラリー戦に我慢を重ねて、すぐブレークバックに成功。このブレークの応酬が第11、第12ゲームでも繰り広げられという肩の凝る展開でタイブレークにもつれ込んだ。

 ともにベースラインからの打ち合いをプレースタイルとするが、どちらかと言えば、ペンの方がネットプレーもうまく、攻撃的で常に揺さぶりのチャンスをうかがっている。ここまで6度対決し、5勝1敗でリードしているウォズニアッキに心の準備があったにしろ、高い集中力を維持しており、かなりの覚悟を感じさせた。そこまでの1時間の内容で、その覚悟がペンにも伝わっただろう。微妙な温度差がタイブレークの短い世界では大きな差になる。ペンのバックハンドからのミニブレークで始まったが、ウォズニアッキはそこからの打ち合いを制して連続ミニブレーク。さらに辛抱強く2ポイントをキープしたところで、ペンが崩れた。ストロークのミスを続け、ウォズニアッキが先手を取った。

ペンが惜しくもリタイア

 中国の女子テニスの台頭は著しく、今大会も予選からの3人を含め6選手が本戦入り。このきっかけを作ったのは、今年の全豪チャンピオンとなったリー・ナ、ウィンブルドンのダブルスで2006年に優勝したジェン・ジエ、そしてダブルスで昨年のウィンブルドンと今年の全仏を制したペンの3人だ。今大会ではリーが欠場し、1回戦でジェンを倒してきたペンだけに、初の決勝進出への思いは強かっただろう。

 第2セットは、ペンが第2ゲームを先にブレーク。しかし、そこからウォズニアッキが強かった。第3ゲームのペンのサービスゲームでは、30−15からペンがネットに出たのを見たウォズニアッキが、バックハンドをペンのボディーに放った。ペンはうまくボレーで返したが、打球がわずかにコートを蹴って方向を変えた。これに対応するのはよほどの反射神経だが、ウォズニアッキはそれを拾い、後方はるかにロブを沈めた。これは大きなポイントだった。

 30−30からウォズニアッキにダブルフォルト、フォアハンドのミスが続いてブレークバック。先にブレークされてもすぐ追いつく、このパターンにウォズニアッキの集中力が表れていた。第4ゲームは2本のブレークポイントをしのぎ、逆に第5ゲームをブレークし初めて先行した。

 ウォズニアッキが4−3のリードで迎えた第8ゲーム、30−40からペンが足の痛みを訴えて治療中断に入った。コート上はかなり暑く、スタッフが氷を持って行ったことから、けいれんと思われるが、ルールではけいれんによる治療は認められない。本人はそう申告しなかったと思われる。ペンは、今年の全豪オープンの奈良くるみ(安藤証券)との試合でも同じようなアクシデントで敗れている。ペンは一度はコートに戻ったが、結局、リタイア。第1セットが素晴らしい内容だっただけに、残念な結末だった。

セリーナ、強風をものともせず圧勝

 続く第2試合のセリーナ対エカテリーナ・マカロワ(ロシア)は、一方的な試合になった。ここまで勝ち上がれば、セリーナが圧倒的な強さを発揮する。これまでグランドスラムの準決勝では21勝3敗(勝率88%)、決勝は17勝4敗(勝率81%)。風が強く吹くコンディションだったが、それこそ、どこ吹く風といった様子で、強烈なフォアハンドで左利きのマカロワのバックハンドを攻めたてて、最後まで寄せ付けなかった。

 ナンバーワンに君臨しながらグランドスラムのタイトルがなく、“無冠の女王”と呼ばれたウォズニアッキ。セリーナの厚い壁を前に、果たして夢は開くだろうか。ドラマはいよいよ最終章を迎える。

(文:武田薫)
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