伊藤竜馬「僅差の敗戦」の向こう側 全米オープンテニス

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世界との差は確実に縮まっているのに

善戦するも敗れた伊藤だが、世界との差は確実に縮まっている 【写真は共同】

 伊藤竜馬(北日本物産)にとって、フェリシアーノ・ロペス(スペイン)との対戦はこれが3度目。3年前の全米オープンはストレート負けだったが、2013年の楽天オープンでは1セットを奪った。差はじわじわ縮まっているが「僅差」の大きさが1セットオールで迎えた第3セットの第9ゲームに出た。

 そこまでの2セットでは、伊藤がポイント数で3ポイント、ウィナーの数でも2本上回る内容で展開していた。第3セットも互いにサービスゲーム・キープの4−4から、伊藤のサービスゲームは30−0。しかし、ここからふっと息が抜けたように、ダブルフォルト絡みで4ポイントを献上し、ブレークを許した。

 続く第10ゲームで0−30と追い上げる雰囲気もあったのだが、ロペスがサーブのギアを上げて逃げ切り、セットカウントで2−1とリードされた。このセット、第6ゲームでロペスが2つのダブルフォルトを犯し、伊藤は15−40に2本のブレークポイントが転がったが、ここを攻めきれず、ロペスのきれいなネットプレーの壁を打ち破ることができなかったのが尾を引いた感じだ。

 第4セットはともにアンフォーストエラーが目立ったが、リードをすれば、サーブ力で優位に立つロペスにはタイブレークを見据えた余裕が生まれる。伊藤のファーストサーブの確率が40%まで落ち、ストローク戦で主導権を握りながら思い切った勝負をかけられぬまま、タイブレークの3本目のマッチポイントを決められた。
 伊藤は時速200キロ台のサーブを持ち、角度のあるフォアの強打で相手を再三、脅かした。世界との差は確実に縮まっているのに、あと一歩、もう少し……歯がゆさの残る試合だった。

錦織との二枚看板へ

錦織との二枚看板としてその成長に期待がかかる伊藤 【写真は共同】

 伊藤は、明るく楽しく笑顔の絶えない好青年である。錦織圭(日清食品)の1歳年上で、日本男子のナンバー2として、あるいは貴重なダブルス要員として存在感を持つ。今回本戦入りを果たした錦織、ダニエル太郎(エイブル)、西岡良仁(ヨネックス)とは違い、拠点を日本に置き、インターハイから全日本選手権という道のりを歩んできた。そのために「純国産」と呼ばれることもあるが、それはともかく、問題は目標設定だろう。これまでも世界ツアー挑戦と全日本選手権挑戦の関連性が明確でなかったし、この9月にはアジア大会の団体戦に出場するスケジュールを組んでいる。楽天オープンと重なるため個人戦には出ない――様々な事情があるにせよ、方向性にメリハリをつけなければ、ツアー経験を次に生かすのは難しいのではないか。
 運にも恵まれ、今年の全米オープンでは念願の1勝を得た。この好運を生かし、錦織との二枚看板の形成に繋げて欲しい。

波乱含みの大会5日目

 この日は波乱含みの1日だった。女子では第2シードのシモーナ・ハレップ(ルーマニア)が32歳、ミリヤナ ルチッチ(クロアチア)にストレートで敗れた。ルチッチは180センチ長身を武器としたパワーヒッターだが、マルチナ・ヒンギス((スイス)とのペアで全豪オープンのダブルスを制したのは16年前、17歳でウィンブルドンのベスト4に入ったのは15年も前のこと。長いブランクを経て、予選から勝ち上がって金星をつかんだ。

 第13シードのサラ・エラーニ(イタリア)はビーナス・ウイリアムズ(米国)に逆転勝ち。マリア・シャラポワ(ロシア)はサビーン・リシッキ(ドイツ)を倒し、キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)はアンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)を退けたが、第6シードのアンジェリーク カーバー(ドイツ)は、奈良くるみ(安藤証券)を破った17歳のベリンダ・ベンチッチ(スイス)に敗れた。

 また、女子ダブルスでは、クルム伊達公子(エステティックTBC)とバーバラ ザラボバ・ストリコバ(チェコ)のペアが3回戦に勝ち進んでいる。

 男子では第2シードのロジャー・フェデラー(スイス)、第7シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)は危なげなく勝ち進み、第4シードのダビド・フェレール(スペイン)もバーナード・トミッチ(オーストラリア)の棄権をもらったが、第11シードのエルネスツ・ガルビス(ラトビア)が僚友のドミニク・ティエム(オーストリア)に敗れ、若手成長株の一人、イェルジ ヤノウィッツ(ポーランド)もここで姿を消した。

(文:武田薫)
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