意外と知らない富士山10の豆知識 フジヤマNAVIの登山ガイド(2)
(6)富士山をペンキで赤く染めろ! 本当にあった米軍のトンデモ作戦
【フジヤマNAVI】
太平洋戦争当時、CIA(アメリカ中央情報局)の前身であるOSS(戦略情報局)には「神経戦部」という部署があった。戦争というのはただ、相手を攻撃するだけではない。たとえば空爆の際、無益な戦争を止めて、武力抵抗を無駄だというようなビラを散布している。要するに、「このまま戦っても無駄だ」と敵国の士気を落とすことも重要で、この
「神経戦部」というのは、 “何をしたら日本人がへコむのか”ということを研究していた部署である。その「神経戦部」の科学者がある時、富士山に着目をした。日本人をこの山を大変愛している。その理由はやはりあの美しさからだろう……そんなことを考えていた科学者は、ある作戦を思いつく。
「あの美しい富士山を汚したら、日本人の士気はかなり落ちるのではないか」
具体的には、青くて美しい富士山をペンキで赤くしてやろうというわけだ。アメリカ人らしい実に大雑把な作戦だが、驚くことにこの作戦は採用された。
しかし、結局これが実行をされることはなかった。いざ富士山を赤にするためにどれほどのペンキがいるのかを試算したところ、表面積から考えてペンキが約12万トン必要で、それを運ぶにはB29が約3万機いることがわかったからだ。
B29が飛び立つのはマリアナ諸島から富士山まではおよそ2500キロ。燃料は1機200万。つまり、燃料代だけでも600億かかるのだ。それだけ莫大な金をかけて、日本人をへコませてもなあということになったというわけだ。
(7)富士山頂で「ごはん」を炊くと芯が残る“半生状態”に
【フジヤマNAVI】
そのなかでも意外と多いのが、カップラーメンなどを持っていて頂上で食べようという人たち。わざわざ山頂まで行ってカップラーメンなんて食べなくても、と思うかもしれないが、やはり日本一高いところで食す味は格別なのだろう。だが、そういう「頂上食」をしたい人にひとつ注意をしておくと、富士山の頂上では、美味しく食べることが困難なものがひとつある。
それは「ごはん」だ。実は、富士山の頂上ではご飯を炊こうとしてもうまく炊けない。その理由は、気圧だと考えられる。これだけの高さなので気圧は平地の63%の約640hPaしかない。
気圧が低いということは、「沸点」(水が沸騰をする温度)も低い。この気圧では、約88度でお湯が沸いてしまうといわれている。ご存知のように、野外での炊飯は「はじめチョロチョロ、なかパッパッ、赤子泣いてもフタとるな」と言われるように、チョロチョロのあたりで強火で一気に沸騰をさせなくてはいけない。それが、88度という低温では、米の芯にまで火が通らないで、半生になってしまうという。
実際に、頂上で炊飯をした人によると、「こんなにマズい御飯を食べたことがない」という。沸騰をしているのに、温いお湯でさっと湯がいたような感じで、表面は柔らかいが、中味は硬くて芯が残っている。おまけに沸点が低いがゆえに、水がすぐに蒸発してしまうため、そんな状態でも焦げ臭いんだとか。水を多めにしたり、できるだけ弱火で炊くなど、高地ならではの炊飯のコツもあるようだが、普通のキャンプの感覚では前述のようになってしまうのだ。
ただし、富士山でのバーナーの使用はあくまでも周囲の登山客や山小屋の迷惑にならぬようマナーを守っていただきたい。
(8)日本一の高さで愛を誓う 富士山はユニーク結婚式のメッカだった
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静岡県富士宮市に鎮座する富士山本宮浅間大社。全国の浅間神社の総本宮にあたるここの「奥宮」が 富士山頂にあり、3カ月前に申し込みをして10万円の初穂料を支払えば、誰でもここで結婚式を挙げることができるのだ。とはいえ、当たり前だが頂上までは自力で登らなくてはいけない。ウェディングドレスならばなんとか運んで着替えることはできるかもしれないが、角隠しは無理だろう。
受付期間は7月15日8月15日の約1カ月。頂上で式を挙げるカップルは、年に3組ほどいるらしく、運が良ければ頂上で、ウェディングドレス姿の花嫁を見ることができる。
日本一高い場所で愛を叫ぶ。
2人で苦労をして頂上まで登ったことに合わせて、一生の記念となること間違いないだろう。ただ、本人たちは自分たちが望んだ式場なので幸せだろうが、参列者として呼ばれたら……正直ちょっとツラいかもしれない。
(9)大雨が降るとあらわれる「赤池」の不思議
【フジヤマNAVI】
富士山の世界文化遺産を構成する資産候補としても知られ、かつては文化庁が、「富士五湖を含めないと富士山として不完全」だという見解を示したほど、富士山とはきっても切れない湖だ。そんな富士五湖だが、よく知られているのは本栖湖、精進湖、西湖は、かつて一つの湖だったという話である。
富士五湖は、富士山の噴火によって堰き止められ、窪地に伏流水でできた「堰止湖」というもの。伏流水とは、地上に降った雨や雪が地下にしみ込んで、地層の中の目の粗い岩や砂礫から流れ出てくるものだ。この伏流水がしみ出して貯まったものが、長い歳月をかけて湖になったのである。事実、これら三つの湖面の標高は同じで、どんなに増減があっても水位がいつも同じである。このことから、この三つは今もつながっていると考えられている。
古代は、本栖湖、精進湖、西湖の3湖はつながっていて「セの海」と呼ばれ、また河口湖、山中湖や忍野八海を含む湖を「宇津湖」と呼んだ。そして、新富士火山の溶岩流によって河口湖と本栖湖が誕生。続いて貞観の大噴火の溶岩流により、セの海がさらに分断され精進湖と西湖が誕生。また、1500〜1000年前に山腹から流れ出た溶岩流によって河口湖と山中湖が現在の形となった。
そして、あまり知られていないが、この精進湖の南東に実は6番目の湖がある。といっても、それは大雨が降って増水したときだけにしかあらわれない「幻の湖」である。それは「赤池」である。湖底を埋めた赤い溶岩から名付けられたそうで、大きさは直径50メートルほどの小さな湖だ。林のなかに突如あらわれて、湖底にはそのまま森があるというかなり神秘的な光景である。
最近では、1998年、2004年、そして昨年に出現した「幻の湖」。富士山に通っていれば、いつかその目で見ることができるかもしれない。
(10)千円札の「逆さ富士」は本栖湖の隠れ絶景スポットだった
【フジヤマNAVI】
しかし、ひとつ奇妙なことがある。その場所に立って、富士山を眺めてみると、お札に描かれているアングルと、ビミョーに違うのである。お札の「逆さ富士」を見ると、両脇に竜ヶ岳(向かって右側)、大室山(向かって左側)が映り込んでおり、稜線が大室山の稜線と重なる位置関係にある。しかし、撮影場所だという位置から見ても、稜線は重ならないのだ。
結論から言うと、『湖畔の春』が撮られたのは、ここではない。案内板の建つ場所の近辺には、売店を兼ね備える『浩庵』という民宿がある。ここは、岡田紅陽が『湖畔の春』を撮るために常宿としていたところで、現在、『湖畔の春』が展示されている。
この宿の隣の小屋から、裏山を登り険しい山道を抜けると、頂上近くに展望台らしきスペースが広がり、さらにそこから少し上ると、幾つか岩がある。そのなかのひとつに立って、富士山を眺めると、『湖畔の春』のアングルとピッタリ一致をする岩がある。実はこここそが、岡田紅陽が『湖畔の春』を撮影した場所なのだ。
下の案内板から登るので、やや疲れはするが、「千円札に描かれた逆さ富士」のホンモノを拝むことができる。この絶景はぜひ一度見て欲しい。