東海大相模、原貢氏に誓う44年ぶりV、門馬監督「おやじの魂と一緒に甲子園へ」

大利実

7点リードでも攻め続ける相模野球

東海大マネージャー、コーチとして原貢氏の下で野球を学んだ門馬監督。攻撃野球に投手力を加え、狙うは44年ぶりの夏の頂点だ(写真は2011年のもの) 【写真は共同】

 今大会、門馬監督は「得点」にこだわり続けた。「うちらしい得点の取り方だった」と選手を褒めたのが、準々決勝の橘学苑戦だ。4本のホームランが飛び出したが、相模らしいのはそこではない。

 9−2とリードして迎えた6回表、平山快のソロで1点を追加。そして、2アウトから長倉蓮が四球を選ぶと、代走の豊国誠太が次打者・小酒井慶司の4球目に盗塁。さらに、3連続四球で1点を挙げると、打席には1番・楠研次郎が入った。1ボール1ストライクからのカーブを引っ張り、一塁手への強いゴロ。投手のベースカバーが遅れたため、一塁手と楠の競争となり、頭から滑りこんだ楠の手がわずかに早く内野安打とした。この間に、三塁走者はもちろん、代走で起用されていた二塁走者の2年生・宮地恭平まで、好判断で本塁を踏み、このイニングだけで5点を奪い取った。

「楠のヘッドスライディング、宮地の走塁に、1点に懸ける執念を感じました。ああやって積極的な走塁で得点を取るのがうちの野球です」

 いかなる場面でも、隙を見せずに攻め続ける。

 決勝の向上戦では、1点リードした4回表、無死一塁から4番・平山がヒットエンドランを敢行。見事なライト前ヒットで一、三塁とチャンスを作り、追加点につなげていった。

強力投手陣と高い得点力で栄冠へ

 今年の東海大相模には、決勝で20奪三振を記録した2年生・吉田凌、準決勝の横浜戦で先発した背番号1の青島凌也、横浜戦で9回2死満塁のピンチをしのいだ2年生左腕・小笠原慎之介、身長190センチの大型右腕・佐藤雄偉知と、140キロ台のストレートを投げる投手が4人もそろう。そのため、「投手力の相模」と言われ続けていた。しかし、平山キャプテンを中心に攻撃陣も奮起。伝統の攻撃的な走塁に加えて、神奈川大会最多タイとなる1大会11ホームランを放つなど、高い得点力を見せつけ、4年ぶりに夏の頂点をつかみとった。

 決勝後、「甲子園での自信は?」と問われると、門馬監督は「まだ分からない。ただ、明日には『ある』かもしれない」と言葉を残した。

 掲げる目標は神奈川制覇ではなく、全国制覇。7月6日には夏の日本一を目指すために、大阪桐蔭と練習試合を行い、力勝負を挑んできた。ただ、2試合ともに敗戦。「甲子園の決勝で大阪桐蔭とやりたい」と、1番レフトの楠は語る。

 門馬監督は00年、11年とセンバツは2度制しているが、夏の日本一はまだない。10年は決勝に進むが、春夏連覇を成し遂げた興南(沖縄)に大敗を喫した。

 東海大相模は70年、原貢監督の下、夏の日本一を果たしている。今夏、「内容よりも結果。勝つことにこだわる」と言い続けていた門馬監督。タテジマのプライドを胸に、夏の戦いはまだまだ終わらない。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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