ショー化の弊害!?“孤立”したF1を考える=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第31回
ガラパゴス化したF1
F1がガラパゴス化したのは、バーニー・エクレストン(写真)が権力を独占した弊害か? 【LAT Photographic】
なぜ、こんなことになったのかを考えてみたが、それはとりもなおさずF1のガラパゴス化が原因だろうという結論に達した。ガラパゴス化というのは常識的な立ち位置から見て孤立した状態を言う。多くの人は自分が常識的だと考えており、その常識に照らして異端であるコトやモノをガラパゴスと称する。語源はガラパゴス諸島にあることは今さら説明はいらないだろう。
F1はなぜ、ガラパゴス化したのか? それにはいろいろと理由はあるが、基本的にはバーニー・エクレストンによる独占開催がもたらした弊害と言えよう。彼はF1をテレビに売ることによってヒーローを作り出し、一種のショーに仕立て上げた。テレビの力は絶大で、自動車メーカーや国際的企業がスポンサーとしてF1に参入してきたのは、ひとえにテレビ放映があったからにほかならない。
社会が求めるものとかけ離れた技術
F1に参戦し続けるチームや企業は、F1の呪縛に雁字搦(がんじがら)めにされているのではないだろうか? 例えば技術。F1の技術は高出力で高速を可能にしなければならない。そのために、開発が続けられてきたF1技術だけは特別だというおごった気持ちがあるのではないだろうか? その結果、社会が求める自動車技術とはかけ離れた技術を後生大事に抱え、ここまで来たのだろう。
ところがあるとき、このままではF1は完全に孤立する、と気付いた者がいた(すでに十分孤立しているのだが……)。そして、世間に対してわれわれF1も敏感であるという姿勢を見せるために、環境技術を盛り込んだ規則を作り上げた。それが2014年から採用されたF1の新技術規則だ。何事にも頂点でなければならないF1だから、数値だけは厳しい。
孤立から脱却するためには?
その孤立から脱却するには、参入して活動する自動車メーカーが、誰でも購入できる廉価な市販車にも採用される可能性のある技術の重要性を、F1中枢に説いていくことしかあるまい。そこでやっとF1は自動車産業に与することができることになる。
その他のネガティブな問題は、どこにでもある問題だ。ただし、観客数減、テレビ視聴率低下はF1が大勢の人にとって魅力を失いつつあることを示している。どうすれば回復できるのか? 技術の問題も含めて原点に戻って考えてみた方がいい時期に来ていると思う。パドックの華やかさに目をくらまされることのないように、くれぐれも冷静に。
『AUTOSPORTweb』
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