世界に誇るコンテンツへと変貌したMLS カカ、ビジャ、ランパードら大物が参戦

池田敏明

選手たちがMLSを選ぶ要因とは?

ビジャは移籍を決断した理由について「僕と家族にとって断れないオファーだった」と語る 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 彼らが移籍を決断した要因の1つとして、MLSの恵まれた環境も挙げられるだろう。ニューヨーク・Cの一員となるビジャは、移籍を決断する理由について「僕自身と家族にとって断れないオファーだった」と語っている。スペインメディアの報道によると、ビジャとニューヨーク・Cが結んだのは3年契約で、約700万ドル(約7億2000万円)の年俸を受け取ることになるという。

 このクラブはマンチェスター・シティとニューヨーク・ヤンキースが共同経営しているため、資金力には全く問題がない。このニューヨーク・Cに限らず、各クラブの経営陣には野球など他のスポーツクラブのオーナーを務めている企業も多く、彼らは米国でのスポーツクラブ運営のノウハウを備えているため、おそらく家族に対してのフォローも万全なはず。そして何より、ニューヨークやオーランドといった大都市での生活というのは、選手本人はもちろん、家族にとっても非常に魅力的で、快適なものだ。

かつてないほど高まっている人気

 サッカー自体、そしてリーグ戦の人気も、以前とは比べ物にならないほど高まっている。W杯・ブラジル大会では、米国対ポルトガル戦が国内のサッカー中継史上最高となる約2500万人の視聴者数を獲得した。MLSの観客数は平均1万8594人で、これはドイツ、イングランド、スペイン、メキシコ、イタリア、フランス、オランダに次いで8番目の多さ。デンプシーやマルティンスが所属するシアトルの平均観客動員数は4万人を超えており、いまやこの街では、野球のシアトル・マリナーズよりもサウンダーズのほうが高い人気を誇っているという。

 これらはすべてリーグ、そして各クラブが環境整備、サポーター獲得に向けての地道な努力を続けた成果であり、他のクラブの観客数も今後、さらに伸びていくだろう。確かにプレーレベルはヨーロッパ各国のリーグに比べると低いかもしれないが、生活環境、練習環境、そして試合環境がすべて整った中で生活できる。ファンの視点で見れば、カカやビジャ、ランパードのプレーを生で見られるのはうらやましい限りであり、またチームメートや対戦相手にとっても、世界を経験した男たちのプレーを肌で感じるのはこれ以上ない経験になるだろう。

 観客席がガラガラだった時代は過ぎ去り、MLSは世界に誇る優良コンテンツへと変貌を遂げつつある。あらゆる面での充実ぶりが感じられるMLSへの移籍は、スター選手たちにとって現実的な選択肢の1つとなっているのだ。

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著者プロフィール

大学院でインカ帝国史を研究していたはずが、「師匠」の敷いたレールに果てしない魅力を感じて業界入り。海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファー、なぜか動物番組のロケ隊と、フィリップ・コクーばりのマルチぶりを発揮する。ジャングル探検と中南米サッカーをこよなく愛する一方、近年は「育成」にも関心を持ち、試行錯誤の日々を続ける

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