ダルがNYで見せつけた上質な投球、チーム低迷も「エース」の働きに期待
黒星もファンを魅了したピッチング
まさかのコールドゲームで6敗目を喫したダルビッシュ。チーム低迷の中、今後はエースとして活躍できるか? 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
24日にしても、消化不良のマウンドの中で、輝くハイライトシーンがなかったわけではない。これまで通算17打数7安打と打ち込まれていたイチローとの対決では、2度にわたって力強さを見せつけた。
まず2回裏には2死二塁の場面で、低めの97マイル(約156キロ)の速球で見事に空振り三振。続く4回にはまたも2死二塁で打席に迎え、今度は94マイル(約151キロ)の真っすぐで詰まらせてライトフライに斬って取った。
「イチローさんをアウトに取れたというのはもちろん良かったです。ちょっと印象が違うのをイチローさんに見せられたかなと思います」
試合後、ダルビッシュはイチローとの対戦への特別な思いを素直に認めていた。同国の先輩に対してもこうして真っ向勝負を挑み、見ているファンを魅了できる華やかさは、やはりダルビッシュならでは。今では看板スターの少なくなってしまったヤンキースより、日本のエースの投球をもっと見たいと願って、雨の中でも再開を待ったニューヨーカーも多かったはずだ。
好投手が続々故障するMLB、エースの役目を全うできるか?
現時点で両リーグ最低の勝率が示す通り、レンジャーズのチーム状態はどん底。DL入りした選手はメジャー最多の13人を数え、プリンス・フィルダー、ジュリクソン・プロファー、ミッチ・モアランド、マット・ハリソン、デレク・ホランドといった多くの主力が不在となっている。
「違いを生み出せるはずの選手たちを失ってしまえば、やはり厳しい。しかし、おかげで他の誰かがメジャーでのプレー機会を手にできる。現時点でテキサス・レンジャーズでは多くの選手にチャンスがあるんだ」
ロン・ワシントン監督はそう語って現状を正当化していたが、相当なマニアでなければ知らないような選手がラインナップに連ねる事実はやはり寂しい。
地区レベルの高さを考えても、もうプレーオフ出場の可能性はゼロ同然。過去2年は常に優勝争いの最中にいただけに、ダルビッシュにとっても物足りないに違いない。ただ……。それでも考えようによっては、チームからケガ人続出の今だからこそ、あらためて証明できることもあるかもしれない。
「ずっと続けて結果を残すというのは、体とも向き合って、体のことも知らないといけないので、すごく難しいことではありますけど。健康でいられることは良かったなと思います」
22日のヤンキース戦前、ダルビッシュはそう語り残していた。
実際にレンジャーズに限らず、最近のメジャーでは実績ある投手の故障が多発している。右肘靭帯(じんたい)の部分断裂が発覚したヤンキースの田中将大が、戦線離脱中なのはご存知の通りである。しかし、そんな中でもダルビッシュは短期間の離脱を除けば3年間続けて好成績を残してきた。悪天候に泣いた24日も、約1時間半の中断後もマウンドに上がろうとするたくましさすら見せてくれた。
メジャーにさまざまな形で一石を投じ続けるダルビッシュは、このまま3年目も健康を保ち、エースらしい成績を残せるのかどうか。
現在のチーム状況では個人記録を意識した投球も多少は許されるだけに、後半戦でも奪三振の山を築く快刀乱麻は期待できる。そして、その時には、日本人選手離れしたスケールの大きさを感じさせる右腕の価値が、広く再認識されることにもなるはずである。