批判報道で退任を決めたホン・ミョンボ 韓国サッカー界を揺らした突然の辞任劇

キム・ミョンウ

成績不振のほかに起こった“騒動”が引き金に

監督続投の発表から1週間後、突然の辞任を発表し、韓国サッカー界を揺るがしたホン・ミョンボ 【Getty Images】

 突然の辞任劇に衝撃が走った。

 日本でも既報の通り、ブラジルワールドカップ(W杯)で韓国代表を率いたホン・ミョンボ氏が今月3日に監督続投を発表してから1週間後の10日、辞任を表明した。

 ホン氏は会見で「国民を失望させて申し訳ない。自分の力が不足しているとの考えに至った」と話しており、結果を残せなかったことに対し謝罪の言葉を口にした。

 あまりのドタバタ劇に「一体、何があったのだろうか」と気になる人も多かったと思うが、1分2敗の最下位でのグループリーグ敗退が辞任の最大の理由と考えるのが一般的だろう。

 だが、辞任の理由は、突然降りかかってきた“騒動”にあった。それには大きく分けて2つあるのだが、発端はすべて国内メディアの報道によるものだった。

選手選考時期に土地購入

 1つ目は、代表合宿が始まった5月15日に、ホン氏が京畿道城南(キョンギド・ソンナム)市に土地を購入していた事実が一部のメディアで報道されたことだ。

 この報道によれば、ホン氏は代表の選手エントリー発表の約4週間前の4月18日に土地代金の11億ウォン(約1億円)のうち、10%の1億1000万ウォンを支払って契約し、代表合宿が始まる5月15日に最終契約をしたという内容だ。

 ただ、個人的に土地を購入するという行為が、チームに与える影響は皆無に等しく、そんなプライベートなことまで報道する必要性があるのかとも感じる。

 だが、一部で「選手選考とグループリーグ突破に力を注がなければならない時期に土地を購入するのはどうか」との見方があるのも事実だ。これについてホン氏は会見で「土地の問題は個人的なこと。練習時間に土地購入をしたという話もあるが、そのようなことは絶対にない」と説明した。

敗退後の会食映像が流出し批判が殺到した

 スポーツ・芸能総合サイト『OSEN』サッカー担当のウ・チュンウォン記者も「土地購入に関しては個人的な部分ということと、発覚したのが大会後だったので、それがチームに影響があったとは考えにくい。それよりも大きな問題となったのはもう1つの騒動で、ブラジルのレストランで選手と監督が楽しく会食しているレストランの映像だった」と話す。

 ウ記者の話によると先月26日(現地時間)のグループリーグ最終戦、ベルギー戦に0−1で敗れ敗退が決まった後、韓国代表の選手たちはサンパウロで1泊。翌27日にベースキャンプ地であるイグアスへと移動した。その日の夜に監督と選手たちがレストランで会食したのだが、その映像が流出したのだ。

 テレビのニュースでこの映像が報じられると、ホン氏や代表への批判が一気に殺到した。この映像を見た途端、批判の集中砲火が浴びせられるのは無理もない。

 テーブルに置かれた多くのお酒を飲みながら会食するチームスタッフと選手たち。現地のブラジル人であろう女性がマイクを持って歌を歌い、その女性と一緒に踊るスタッフや選手もいた。その様子を携帯のカメラで撮影したり、それを笑顔で見つめるホン氏の姿もあったのだ。

 この騒動についてもホン氏は会見でこう話している。
「すでに辞任することを決心していた状況で、W杯の結果に落ち込む選手たちの心の痛みを少しでも和らげてあげたかった」

 正直、ホン氏の気持ちも分からなくはないし、今まで苦楽を共にしてきた選手たちに慰労の意味を込めて、食事を楽しむことになんら罪はない。ただ、その中身に問題があった。

 ウ記者も今回の映像流出が辞任の決定的な理由になったと指摘する。
「監督と選手たちが敗退後に、みんなで食事をすることは普通にあること。ただ、流出した映像の内容は明らかに想像を超えていた。特に儒教精神が根付く韓国において、敗退の後にそのような会が行われたとなれば、多くの韓国国民は黙っていないはず」

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著者プロフィール

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

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