偶然ではない「フォルタレーザの奇跡」 コンディションの重要性を知るオランイェ
好調を支えるコンディション哲学と控え組の奮闘
中盤の汚れ役をこなしたスナイデル。同点弾をたたき込み、コンディションの良さがうかがえる 【写真:ロイター/アフロ】
ファン・ハール監督は移動と気候の厳しいW杯ブラジル大会を見据え、誰よりも早い2012年夏の就任時からコンディションの重要性を唱え、代表チームの招集条件として選手たちが所属クラブでしっかり出場し続けることを挙げていた。しかし、ファン・ペルシに対してはロッベン、ケビン・ストロートマンと共にチームに欠かせない選手として例外を与えた。だが、ブラジルに来てからもファン・ペルシはそけい部やひざに痛みや違和感を感じている。そのため、ファン・ハール監督は試合途中からファン・ペルシとスナイデルを下げ、デパイとイェレマイン・レンスを前線に置き、ロッベンをトップ下にするプランも温めていた。
メキシコ戦は延長戦の可能性もあった。フレッシュな力が必要だったあの時間帯に、フンテラールIN、ファン・ペルシOUTは、過去2年間のファン・ハール監督のコンディション哲学と現在のファン・ペルシの状態を見れば納得できるものだった。
今大会オランダは、4試合のうち3試合も逆転勝利をつかんでいる。これは1970年大会の西ドイツ以来だ。
パウル・フェルハーフとフンテラールの出場によって、今大会のオランダは23人中、実に20人がピッチに立ったことになる。開幕戦のスペイン戦にピークを合わせたものの、オランダのコンディションが落ちることなく4試合を戦い、後半から尻上がりに調子を上げて行くのは、ファン・ハール監督の采配も大きいだろうし、デパイ、レロイ・フェル、レンス、カイト、メキシコ戦で1ゴール1アシストを記録したフンテラールら控え組の奮闘もあるだろう。
中盤の汚れ役に徹したスナイデル
彼はインテルで出場機会をなくし、ガラタサライに移籍したもののパフォーマンスが安定せず、ファン・ハール監督から批判を浴び続けてきた選手である。下手をすれば、今回の代表23人のメンバー漏れもあり得る状態だった。危機感を感じたスナイデルはK−1戦士グーカン・サキの協力を受けて肉体改造に励み、しっかりコンディションを整えて大会前の合宿に合流、ファン・ハール監督を歓喜させた。その苦労が、誰もが疲れた88分の強烈なミドルシュートの同点弾で実った。中盤マンツーマンの戦術を完遂できるのも、その心身整った状態ゆえだ。
この日、唯一の偶然は、デ・ヨングを下げるとき、ファン・ハール監督がデ・グズマンを入れるか、マルティンス・インディを入れるか悩み、最後は勘に従ったこと。それ以外は、オランダにとってすべてが理にかなったことだった。