グループリーグで輝いた“ヤングガンズ” 列強の中核を担う「U−23」の選手たち

川端暁彦

W杯は「品評会」の一面も持つ

ハメス・ロドリゲス(写真)らグループリーグで輝きを放った「U−23」の若きタレントを紹介していく 【写真:ロイター/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)に参加した32カ国は、グループステージでの死闘を経て16カ国に半減した。ここからのノックアウトラウンドこそがW杯という大会の醍醐味(だいごみ)を体験する舞台となるわけだが、その開幕を前にしてちょっと違った視点からこの大会を見つめ直してみたい。

 このW杯が世界一を競う国別対抗戦であることは言うまでもないが、選手たちの「品評会」という一面を持っていることも確かだ。この大会を機にスターダムへのし上がる選手がいれば、有利な条件での移籍を勝ち取る選手もいる。あるいは無名選手が「発掘」されることもある。

 今回はW杯の中で際立つ光を放った若手選手に注目してみた。基準は1991年1月1日以降に生まれた「U−23」の選手たち。「もし今年が五輪開催年だったら、U−23代表として出場資格のあるプレーヤー」という基準だ。日本代表23名で言えば、DF酒井高徳がこの基準に合致する選手となる。今回の日本はかなり全体的な年齢層が上なのだ。選ばれなかった選手ではFW原口元気(91年生まれ)、柴崎岳(92年生まれ)、南野拓実(95年生まれ)などがこの世代だ。

すでに中核を担うネイマールとオスカル

 過去、幾多のタレントがW杯を機に大きく飛躍していった。彼らに続く選手たちを探してみたいのだが、最初に名前を挙げなければいけないのはやはり、92年生まれの王国の10番。つまり、ネイマールである。まったくもって「発掘」の感覚がない、22歳にして世界のファンをときめかせるスーパースターは、今大会でも開幕戦から存在感を発揮した。今回のカナリア軍団はネイマールの「一発」に依存しているとさえ言えるチームになっているだけに、ノックアウトラウンドでもこの男から目が離せそうにない。

 そして「ブラジルのトップ下」として3試合に出場したオスカルも91年生まれの22歳。彼もまたすでに欧州舞台でトップクラスの選手として認められる選手だが、今大会でも確かな存在感を見せている。特に開幕のクロアチア戦で見せたトゥーキック(つま先でのキック)でのGKのタイミングを外したミドルシュートは、世界のファンを瞠目(どうもく)させるには十分なもの。アシストも2つ決めていて、トップ下としての役割は果たせているようにも見えるが、実際は不満の声も聞かれるようだ。「ブラジルのトップ下」に要求される水準はやはり高い。

 同じくブラジルでは92年生まれのMFベルナールも2試合に出場している。公称166センチ(実測はもう少し低く見える)の小さなドリブラーに期待されるのは試合の流れを変える役割だ。片りんは見せているが、本領発揮はまだこれから。「試運転」の印象もあったグループリーグを経て、決勝トーナメントのこう着した局面で投入されたときに真価を見せられるか。密かに注目しておきたいタレントである。

ほろ苦い記憶となったクロアチア勢

 ブラジルと同じグループAではクロアチアが「U−23」の選手が多い注目チームだったものの、3試合に出場した20歳のMFマテオ・コバチッチはインパクトを残しきれず。3試合に途中出場の大型MF、同じく20歳のアンテ・レビッチは3試合目の登場早々に退場するなどほろ苦いW杯デビューに終わった。そして18歳でA代表入りし、ステップアップしてきた22歳のDFシメ・ブルサリコも本領発揮とはならず。W杯は若手がブレイクスルーを遂げる場として機能することもあるが、ほろ苦い記憶を刻み込む場となることも多い。そんな象徴のようなチームになってしまった。

 チームとして失意を味わったチームの中では、スペイン代表の最年少、22歳のMFコケのプレーが印象的だ。22歳にしてアトレティコ・マドリーで欧州チャンピオンズリーグ準優勝を経験したタレントは、敗退の決まった後に行われたオーストラリアとの最終戦で先発フル出場。屈辱にまみれた世界王者の一員として最後の意地を見せている。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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