西岡の復帰で試される和田監督の“器”=阪神崩壊の危険性を広澤克実が懸念

ベースボール・タイムズ

競争が必ずしも良い影響を与えるわけではない

三塁コンバートなど西岡の起用法に注目が集まる。難しい判断なだけに、和田監督のリーダーとしての器が問われている 【写真は共同】

――西岡選手の復帰でチーム内競争がより一層激しくなることは良いことだと思いますが?

 そこは難しいところです。勘違いされていることが多いんですが、チーム内の競争が激しくなれば、チームが強くなるということでは必ずしもないんですよ。人間それぞれ、いろんなタイプの選手がいるし、いろんな状況がある。ケース・バイ・ケース。チーム内競争によって選手間に相乗効果が生まれることもあれば、その競争が逆の方向に作用してしまうこともある。

――逆の方向というのは?

 西岡が戻ってきたことによって、上本が「結果を残さなきゃ」と焦るようなことになれば、今のようなパフォーマンスを発揮できなくなることもある。打席の中で余計な力が入って、今までのフォームが崩れてしまう危険性もある。上本の性格を考えると、「お前しかいない」という状況に置かれた方がいい気がします。「お前は外さない。ずっとセカンドをやらせる」と言ってあげた方がいいと思います。競争が必ずしも良い影響を与えるわけではない。特に、これからレギュラーになろう、これから育てようという選手にとっては、「お前に任せる」と言って使い続けた方が伸びると思います。

――その辺りは首脳陣の力量が問われますし、うまくコミュニケーションを取りながら選手たちを育てていく必要がありますね。ただ、“勝ちながら育てる”というのは難しいと思いますが?

 確かに難しいですけど、監督、コーチにとってはそれが仕事ですからね。首脳陣はうまく判断していかないといけない。その判断力、決断力というのが組織のリーダーには求められると思います。西岡の起用法についても、和田監督にはリーダーとしての器を試されると思います。ただ、人間1人ができることなんて限られていますので、(黒田正宏)ヘッドコーチを含めた他のコーチ陣がうまく補佐していってほしいですね。

西岡の起用法「大きな目で見る必要がある」

――いろいろと起用法で難しい面はありますが、1つ言えることは、西岡の復帰でチームの雰囲気が変わるということはないでしょうか?

 そうでしょうね。西岡が復帰したことで、チームが一気に上昇気流に乗る可能性もあるでしょう。でも、その逆になる危険性もあります。どちらにしても、首脳陣と選手たちの間の信頼関係が重要になるでしょう。僕らは野球を評論する立場なので好き勝手に言えますけど、現場はそういうわけにはいかないですからね。

――ひとまず、オールスターまでが西岡の起用法に関しての1つの判断材料になりそうですが?

 あまり焦らない方がいい。仮に、西岡がサードで出場してすぐに結果が出たとしても、人間万事塞翁が馬じゃないけど、それで良かったとすぐに判断はできない。今、うまくいっても将来的にダメになることはあるし、今がダメでも将来に生きることもある。だから、その場しのぎではなくて、もっと大きな目で見る必要があると思います。

――来年、再来年も見据えないといけない?

 特に守備位置のコンバートなどは短いスパンではなくて、長いスパンで見て判断しないといけないでしょうね。例えオールスターまで良い結果が出たとしても、「後半戦はどうなんだ?」、もっと言うなら「来季はどうなんだ?」、「3年後、5年後はどうするんだ?」ということを考えていかないといけない。西岡の将来、タイガースの将来を考えて、一番良い方法を見つけ出してほしいですね。

(取材・文:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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