男女・全米OPゴルフでの挑戦 五輪を見据えたジョイント開催とは
テニスの全米オープンを参考に
全米OPの翌週に開催された全米女子OPではミシェル・ウィーがメジャー初優勝を果たした 【写真は共同】
「全米オープン」を主催する全米ゴルフ協会(USGA)は、マーティン・カイマー(ドイツ)が優勝する最終日のスタート前、18番グリーンのピンポジションを「ペイン・スチュワート・ホールロケーション」とアナウンスした。
1999年、パインハーストNo.2で行われた同大会、この最終ホールで4.5メートルのパーパットを沈めて優勝し、その4カ月半後に飛行機事故で帰らぬ人となったペイン・スチュワートをしのぶためにUSGAが再現した「グリーン右奥」のピンポジションだった。
その翌週日曜日の「全米女子オープン」最終日、18番グリーンのポンポジションは……。
「グリーンエッジ手前から26ヤード/右から6ヤード」
そう、史上初めて男子との同会場連続開催(6月12日〜15日、6月19日〜22日)となった「全米女子」で、週末に残った女子選手たちは、15年前の米男子ツアーの歴史的名シーンの一端に触れることとなった。
今年で114回目を数えた「全米」と、69回目だった「全米女子」のジョイント開催は、もともとUSGAの幹部が、毎年男女が同じ会場で開催されるテニスの全米オープンを、観客として視察したことが発想の発端だった。
実際に、彼ら、彼女らは「ペイン・スチュワート・ホールロケーション」だけではなく、ほとんどのピンポジションを共有し、男女各日でほぼ似通った位置にカップが切られた(男女ともに4日間の天候がほぼ快晴だったことも幸運だった)。
ゴルフ特有の魅力を
18ホールの総ヤードは男子7562ヤード、女子6649ヤード(いずれもパー70)。男子の翌週開催だった女子では、水をまいてグリーンを軟らかくし、ショットのスピン量に劣る女子選手たちに普段のコースコンディションを提供した。懸念された男子選手が掘った打球痕などの影響に対しても、女子選手の不平の声は聞こえず、宮里藍は「グリーンは硬くなっていた分、ピッチマークもなくてすごくきれい」とも話していた。
一方で、グリーンの速さを示す指標のスティンプメーターは、12.5フィート前後(USGA発表)に統一され、パワーで差が出にくいパッティングにおいては男女をほぼ同じ条件でプレーさせた。また、長さの調整が必要と思われていたラフに関しては、男子大会から、すべてフェアウエー並に刈り込んでしまうという異例の策が意外な形で貢献し、男女間に差がなかった。
条件の変更(区別)によって老若男女が同じコースでプレーできるというゴルフ特有の魅力を伝える試みと捉えることもできるだろう。
五輪のシミュレーション
この連続開催で恩恵を受けたのは、もちろん後で開催した女子大会だった。2008年のリーマンショックの影響でしばらく収縮傾向にあった米LPGAツアーは、ここ2年で顕著な回復を見せているとはいえ、男子PGAツアーに比べるとやはり人気面で後塵(こうじん)を拝す。日本ツアーの現状とは逆だ。
「会場内の施設を維持」と前述したが、厳密に言えば、ギャラリー用のスタンドは、減少する集客数に備えて約4分の1の大きさに縮小された。ボランティアや警備スタッフも減った。コース外においても、周辺のホテルは1泊当たりの宿泊料が半額になった(というよりも、男子大会の際に倍額以上に高騰していた)。
1週間で10万人を集める男子メジャーに対し、女子メジャーのギャラリーは約半数と言われている。それが、米女子ツアーを取り巻く現状だ。
LPGAのツアープレーヤーたちは今回の試みを歓迎した。
35回目の出場だった53歳のジュリー・インクスター(米国)は「男子の試合を見た人々が、女子選手のうまさにも驚くはず。女子選手は225ヤードくらいしか飛ばないと思っている人もいるでしょうけど、そんなことないわ」と、今後の活性化を期待していた。
男女が同じコースで行われる予定の2016年、2020年の五輪のシミュレーションとしても注目されていた今大会。連続開催の真価が問われるのは、これからだ。
(文・桂川洋一)
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