フランスの二の舞を避けたいスペイン 凋落を見せる前回王者に必要な修正

修正を加えない限り、チームに未来はない

カシージャスのミスがクローズアップされているが、問題の本質はそこではない 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 もはや臨機応変に修正を加えていかない限り、今のチームに残された未来はほとんどない。たとえ今大会で勝ち進んだとしても、その事実は変えられないように思える。グループ突破を懸けた決戦となるチリとの第2戦、続くオーストラリアとの第3戦に勝つことはできるだろうが、恐らく2位通過となる決勝トーナメント1回戦ではブラジルと対戦することになるだろう。1年前、そのブラジルと対戦したコンフェデレーションズカップ決勝の結果は周知の通りだ(0−3でブラジルに完敗)。

 スペインが抱える問題はボール支配の有無ではなく、守備の堅さ、攻撃のバリエーション不足、それが自分たちの趣向に反する存在であるかのようにストライカーやロングボールの使用を放棄してしまったこと、そしてあまりにも意外性のない選手たちの動き方にある。

 そのため自分たちとは対照的に鋭いカウンターを武器とし、ロビン・ファン・ペルシーやアリエン・ロッベンのようなスピードと決定力を擁するチームと対戦すれば、今回起こったような悪夢が繰り返される可能性は十分にある。

 今はカシージャスのミスばかりがクローズアップされているが、彼が他の決定機で見せたセーブがなければ傷口がさらに広がっていたことも忘れてはならない。

無得点のまま早々と帰国の途に就く可能性も

 大きな精神的ショックを受けた今、スペインは何をすべきなのか。1990年イタリア大会の開幕戦でカメルーンに敗れた際、アルゼンチンを率いていたカルロス・ビラルドは先発の半分を入れ替えることを決断した。

 デル・ボスケもそれに似たことをするかもしれないが、コンセプトを変えることなく名前を入れ替えるだけでは何も修正することはできない。そしてもし必要な修正を行わなければ、前回王者かつ優勝候補として臨みながら無得点のままグループリーグ敗退に終わった2002年日韓大会のフランスと同様に、スペインも早々に帰国の途に就くことになるだろう。

 当時のフランスは4年前の優勝メンバーがチームの大半を占めていた。それは今大会のスペインに通じる点だ。ゆえにもしフランスの二の舞となりたくなければ、スペインは第一に自分たち自身が変わることから始める必要がある。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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