フェラーリ撤退はない、ケータハムは…=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第29回
WSJの記事は噂に過ぎない
フェラーリのF1撤退を示唆したモンテゼモロ会長。その発言の真意は? 【LAT Photographic】
しかし、先日の『ウォールストリート・ジャーナル』(WSJ)の記事には驚いた。その記事とは、フェラーリがF1グランプリから撤退してWEC(世界耐久選手権/ル・マン24時間を含む、耐久レースの世界最高峰)に参戦する可能性があるというもの。ル・マン24時間レースを訪れたフェラーリのルカ・ディ・モンテゼモロ会長がそう語ったとWSJの記事に出ていたのだ。しかし、私は誰がなんと言おうと、これは噂に過ぎないと信じている。
恐らく、WSJの記者はモンテゼモロ会長の性格をよく知らなかったのだと思う。モンテゼモロ会長は平気で記者をだます。だますという言葉が正しくないとすれば、起こり得ないことを、さも起こり得るように語る。彼のことをよく知る記者は、また会長の戯言が始まったと思うのだが、知らなければ本気にしてしまうかもしれない。
「F1なくしてフェラーリはない」
この話が出てきたのは、モンテゼモロ会長がフェラーリF1の不調に我慢できなくなってきた証拠だろう。彼は追い詰められると、こうして周囲に不満をぶつける。だが、フェラーリからF1を取れば何も残らないことを、彼が一番よく知っている。
確かに、ル・マンに来た時には「スポーツカーレースをやりたい」と言った。「F1とスポーツカーの両方は同時にできない」とも言った。だからといって、モンテゼモロ会長がフェラーリがF1をやめると考えているというのは、彼を知らない人の短絡的な考えだ。
一方で、もうひとつの噂は?
2010年にF1に参戦(10年と11年は“ロータスF1チーム”として出走)して以来、1ポイントも獲得できていない。活動経費はチームオーナーのトニー・フェルナンデスがすべて用意してきた。チームが大口のスポンサーを獲得してきた気配もない。それは、スポンサーマネーでの活動が基本であるモータースポーツの世界において、異端児的存在に他ならない。
モンテゼモロ会長以上にF1から興味を失ったフェルナンデスが、いつ活動を休止しても不思議ではない。フェルナンデスはそれを否定したが、否定しなければならない噂が出ていること自体、チームは揺れているということだろう。モータースポーツをビジネスとして捉えるフェルナンデスにとって、すべては数字なのだ。
『AUTOSPORTweb』
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