4度のW杯経験を持つ猛者、川口能活 “偉大な”日本代表のブラジルでの可能性

今井雄一朗

川口は過去4度のW杯のすべてを現場で経験した“W杯を最もよく知る日本人”だ 【今井雄一朗】

 いよいよ日本にとって5度目のワールドカップ(W杯)が開幕する。悲劇と呼ばれた1994年米国大会の予選敗退を経て、98年フランス大会で悲願の初出場。以来アジアの盟主として世界への挑戦を続けてきた日本が、今大会でどのようなパフォーマンスを見せてくれるのかは、興味と期待が尽きないところだ。

 日本が出場した過去4度のW杯のすべてを現場で経験した選手が、日本には2人もいる。J1名古屋グランパスの楢崎正剛、そして現在J2のFC岐阜でキャプテンを任されている川口能活である。日本サッカー史上に残る名GKである彼ら2人の熾烈なポジション争いは、そのまま日本のW杯の歴史と重なる。特に川口は98年フランス大会と2006年ドイツ大会でスタメンとして活躍し、他2大会でもチームを支える存在だった。彼はまさに、W杯を最もよく知る日本人である。

 ブラジルW杯開幕を前に、改めて偉大なる守護神に話を聞いた。世界最高峰の舞台から得た経験と喜び、そして落胆。38歳いまだ現役の男は、思慮深いまなざしで後輩たちの活躍を願う。

初めて外からみるW杯日本代表

――今回は日本代表がW杯に出場するようになってから、初めて第三者の立場で観るW杯になりますね。

 そうですね(笑)。ただしまずはJ2リーグの試合があるので、今はそちらに集中はしています。今の僕はFC岐阜のためにプレーしているので。今までと同じように週末が試合、というサイクルは変わらないです。でもテレビを見るとW杯のことをかなりやっていますし、不思議な感じがしますね。今まではやっぱり自分が戦う立場として、日本代表としてこの時期を迎えていたわけです。ブラジルやアルゼンチン、スペインやドイツ、オランダといった国は今まで、もしかしたら自分たちが対戦するかもしれないという視点で見ていましたけれど、そこも完全に自分が子どもの頃に見ていたW杯と同じ延長線上で見られる。今回は本当に純粋に、W杯を楽しんで見られますね。

――大会の開幕直前というこのタイミングで、代表選手たちは何を感じて、何を考えているのでしょう?

 まだこの時期はそんなに実感は湧かないんですよ、選手はね。W杯の日本代表として集まった時点ですごい緊張感を感じて、少し感覚が麻痺しているところがあったりもします。だから開幕戦や開会式を見て、初めてW杯モードになっていくというか、徐々に気持ちが高まっていくものですね。

初出場だが手応えをつかめたフランス大会

――過去の4大会のことを振り返っていただきたいのですが、まずは初出場だった98年フランス大会。初出場ということで今に比べればバタバタしたところもあったのでは?

 確かに何をすればいいかは分からなかったけれど、バタバタはしませんでしたね。僕やヒデ(中田英寿)、(城)彰二、ハット(服部年弘)さんや伊東輝悦といった、2年前にアトランタ五輪の日本代表として世界大会を経験している選手がいましたから。もちろん五輪とW杯では規模が違うので比較の対象にはならないかもしれないけれど、世界大会を戦うという意味で、若い選手たちが経験を持っていたことで浮足立つことはありませんでした。カズ(三浦知良)さんと北澤(豪)さんが直前でメンバーに入らなかったと知った時には、さすがに不安がよぎりましたけどね。

――初めてのW杯はグループリーグ3戦全敗でした。その中でもやり切った感触はあったのでしょうか?

 負けてしまったので、なかったです。ただフランス大会で戦った、アルゼンチンやクロアチアは優勝を狙えるチームでした。そういうチームを相手に、ある程度は互角に戦えたことで自信はつきましたね。W杯とは? 対戦する相手とは? 大会の雰囲気とは? そういうことを初めて体験する手探りの状態。僕らは代表チームなので、当然勝敗にこだわらなければいけないんですけど、世界の中で僕らがどれぐらいやれるかという手応えはつかめた記憶があります。今はアジア予選は突破して当たり前。「W杯のグループリーグはよっぽどの強豪国が同組でなければ突破できるだろう」という論調ですが、当時はそうではありませんでした。そこは今とは全然違って、対戦してみて自分たちがどれぐらいやれるのか、ということを考えていた時代でしたね。

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著者プロフィール

1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。以来、有料ウェブマガジン『赤鯱新報』はじめ、名古屋グランパスの取材と愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする日々。

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