4度のW杯経験を持つ猛者、川口能活 “偉大な”日本代表のブラジルでの可能性

今井雄一朗

今までと違った南アフリカ大会

「ベスト8以上だって行けますよ。いや、行ってほしいですね」と、現在の日本代表に期待を寄せた川口 【今井雄一朗】

――そして4年前の南アフリカ大会は、川口選手にとっては少し特殊な大会になりました。

 そうですね、本当に特殊でした。前の年の9月に脛(すね)の骨を折ってしまって、その時点で復帰してW杯のメンバーに入るのは難しいなと思いながら、諦めずにリハビリを続けていました。シーズン序盤で、僕はその年一度も公式戦に出ていなかったんです。岡田(武史)さんからも、まとめ役が欲しいということで呼ばれたんですけれど、呼ばれたからには出場を目指しますよね。スタッフとして行くわけではなかったので。でも試合に向けた準備をしていても、やっぱり常に周りを見ながら、どの選手に声をかければいいか、自分がどう振る舞ったらいいかと気にしていました。そういう部分で今までのW杯と違った大会だったと思います。

――それでもW杯の代表でいられるという喜びはあった?

 やっぱりW杯ですからね。今こうやって自分が離れてみて、W杯の偉大さを改めて実感しています。例えばテレビなどで、日本代表の試合をスポーツバーで応援しているサポーターたちの姿を見ると、「ああ、僕もこうやって応援されていたんだ」って思う。改めて日本代表選手がW杯で戦うことの偉大さを感じてしまいますよね。4回のW杯に出られたすごさを、外から見て感じているところです(笑)。

今の代表には得点を取りに行ってほしい

――さて今回のブラジル大会を戦う日本代表チームですが、メンバーやスタイルなどについてはどのような印象をお持ちですか?

(アルベルト・)ザッケローニさんが就任してから、本当にち密なチーム作りをしてきていますよね。本当に大事に代表チームを育ててきたな、という印象を受けます。もちろん4年間でメンバーの入れ替わりはありましたが、まるでクラブチームのように、大事に育てている。それは記者会見などを見ても分かります。ミーティングなどでは言っていると思うけれど、監督が会見などで選手を批判することはまずしてこなかったし、選手に対する信頼はずっと揺るぎなかった。Jリーグや海外への視察も精力的にこなしていたし、本当にザッケローニさんの人柄が見えますよね。それが今、実を結びつつある。

――最後にブラジル大会での日本代表に、どんな戦いを期待していますか?

 今までやってきた4年間で、ザッケローニさんは攻撃的なチームを作って攻撃的に戦ってきたと思うんです。それは最近のトレーニングマッチに表れている。ここ何試合かでほぼ複数得点していますよね。これはかつての代表チームにはなかったことだし、親善試合とはいえ、明らかに攻撃力が上がっている証拠だと思う。だから本大会でもとにかく得点を取りに行ってほしいです。

 ある程度のリスクはあって、もちろんトーナメントのことを考えたら失点が少ない方が良い。ただ僕はこの4年間のザッケローニさんのチームを見てきて、そういうチームではないと思っています。だから選手たちは結果にこだわらず、攻撃的に、得点を取りに行ってほしいと思っています。

 上に行く力はあります。そういえば今日の練習の時、ナザリト(FC岐阜/コロンビア人選手)と話したんですよ。「日本はかなり良いね。パスワークもコンビネーションも良い」って言っていました。「コロンビアも強いんじゃないの?」って言ったら、「中盤から前の攻撃はいいけれど、守りはあまり良くないよ」って(笑)。コロンビアには付け入る隙があるかもしれませんよ。

 初戦のコートジボワールに勝てば、ベスト8に行けると思います。コートジボワールは強いけれど、親善試合で強くても、本大会ではどうか。アフリカのチームは本当に独特で、過去にアフリカのチームでまとまりを見せたのはガーナぐらいでしょう。カメルーンやセネガルもベスト8に進出したことがありますけど、継続して強さを維持しているのはガーナぐらい。だからそんなに、コートジボワールのことは、周りが言うほど恐れることはないと僕は思いますね。最近そう思えてきたんです。

 過去に自分が出たW杯のアフリカのチームを冷静に振り返ってみると、そこまで素晴らしい成果は収めていない。五輪などでは結果が出ているかもしれないけれど、W杯は若さや勢いだけでは勝てないんです。その点、今の日本代表チームはけっこう年齢バランスも取れていますよね。ヤット(遠藤保仁)がいてハセ(長谷部誠)がいて、GKには(川島)永嗣がいるし、(本田)圭佑がいて(長友)佑都がいて、それから若い大迫(勇也)とか、(柿谷)曜一朗がいる。それにスタッフも含め、今の日本代表にはW杯を経験している人材がたくさんいるので、ベスト8以上だって行けますよ。いや、行ってほしいですね。

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著者プロフィール

1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。以来、有料ウェブマガジン『赤鯱新報』はじめ、名古屋グランパスの取材と愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする日々。

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