信頼できるザック以下スタッフの経験値 W杯、日本の勝機はコンディショニング

後藤健生

ドイツ大会での準備の失敗

暑さに苦しめられたのが、2006年のドイツW杯。ジーコ監督は「気持ちがあれば、体は動く」と持論を展開していた 【Getty Images】

 日本代表が、暑さに苦しめられたのが、2006年のドイツW杯だった。
 大会開始前、ドイツはかなり気温が下がっていた。まるで冬のような環境の中でドイツ代表と準備試合を行った日本は、一時は2−0でリード。最終的には2−2の引き分けに終わったが、強豪相手の善戦で期待が膨らんだ。しかし、その後調子を落としてしまい、開幕戦では暑さに足が止まって、オーストラリアに大逆転負けを喫してしまった。

 事前の準備試合で調子が良くても、それが本大会につながらない。それは、特に不思議なことではない。Jリーグのプレシーズンマッチの勝敗で、サポーターが一喜一憂する必要はないのだ。

 ドイツ大会で1勝もあげることができなかったのは、コンディショニングの失敗によるものだった。ドイツに渡る前に、日本代表はJヴィレッジで国内合宿を行ったが、トレーニングはすべて公開され、万を超える観衆が連日訪れる騒ぎとなった。そんな中では、選手たちはトレーニングに集中できない。そして、ドイツに渡ってからも、選手たちはボン市内のホテルに閉じ込められて外出もままならず。ここでもトレーニングは公開され、毎日、サポーターや報道陣の視線にさらされることになったのだ。
 そして当然、コンディションが上がらないまま、開幕を迎えてしまったのだ。

 当時の日本代表監督だったジーコは、まだ監督経験がほとんどないまま監督に迎えられた。「気持ちがあれば、体は動く」の名言(迷言?)が示す通り、コンディショニングの重要性などはほとんど意識していなかったのだ。

これまでとは経験値がまったく違う今の日本

 しかし、現在のアルベルト・ザッケローニ監督はイタリアでさまざまなレベルのクラブチームを指導してきたプロのコーチであり、スタッフもそれぞれの分野でコーチとして活躍してきた人ばかり。また、日本サッカー協会が蓄積してきた暑熱対策のノウハウも十分に尊重されているようである。

 コーチング・スタッフの経験値がドイツ大会の時とは、まったく違うのだ。コンディショニングの部分は信頼して任せておいていいだろう。日本代表は、昨年コンフェデレーションズカップに出場しており、選手も監督もブラジルの天候や環境を把握できているのも大きな強み。

 冒頭に述べたように、守備面では不安を抱えているものの、攻撃陣は早いパス回しと多彩な動きで点が取れている。コートジボワールやギリシャの大型DFにとっては、日本のような俊敏な動きをする攻撃には脆さがあるはず。

 とくに対策というよりは、日本代表らしい速いパス回しで、相手のDFラインの裏を突く攻撃ができれば、それが最も有効なコートジボワール対策であり、ギリシャ対策であるということになる。

 失点は覚悟せざるをえないが、間違いなく点は取れるはずである。
 グループリーグを勝ち抜くと、「死のグループ」(グループD)を勝ち抜いてきた強豪(ウルグアイ、コスタリカ、イングランド、イタリアのいずれか)との対戦になる。「初のベスト8」はかなり難しい組み合わせではある。だが、グループDは2位で勝ち抜くと、ラウンド16は再び蒸し暑いレシフェに戻ってくることになる。そこで、暑さに苦しむヨーロッパのチーム(イタリア、もしくはイングランド)と対戦すれば、勝機も見いだせるかもしれない。

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著者プロフィール

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、観戦試合数はまもなく4800。EURO(欧州選手権)は1980年イタリア大会を初めて観戦。今回で7回目。ポーランドに初めて行ったのは、74年の西ドイツW杯のとき。ソ連経由でワルシャワに立ち寄ってから西ドイツ(当時)に入った。

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