好調・広島で光る若い力――チーム力高めた野村監督の育成術に迫る

週刊ベースボールONLINE

就任以来、丸や堂林の起用など大胆な若手起用で結果を出してきた野村監督。「失敗を恐れずにやる」という意識がチームに良い影響を与えている 【写真=BBM】

 現在、破竹の勢いを見せる広島だが、昨年の3位が16年ぶりのAクラスと長い低迷があったことを忘れてはならない。2010年から指揮を執る野村謙二郎監督は、どのようにチーム力を高めて現在に至るのか。若手の起用法と育成法にスポットを当て、その謎に迫る。

王会長の後押しで決めた堂林の起用

 若手の台頭が象徴的な現在の広島。世代交代を見事に成功させた野村謙二郎監督だが、ここまでの道のりは決して並大抵のことではなかった。「若手起用」は言葉で言うほど簡単ではない。それまで主力だったベテランを外し、未知の力を使うのはある意味、大きな賭けだ。野村監督就任1年目は、ベテラン主体の現有戦力で戦う「安全策」だった。だが、若手起用に背中を押したのが、丸佳浩の台頭であるのは間違いない。
 10年9月に当時入団3年目の丸は1軍へ初昇格した。そして11年の春季キャンプで初めて1軍メンバーへ抜てき。キャンプ、オープン戦と結果を出したことで、野村監督は開幕1軍メンバーに入れることを決断した。当初は代打だったが、安打を放つとすぐにスタメンで起用。すると丸は4月21日の横浜戦(横浜)で5打数4安打3打点1本塁打と爆発し、そこからレギュラーとして定着するようになった。

 FA補強しない広島は、必然的に若手の育成が不可欠になる。野村監督も「育成をしながら結果を出さなければならない」と、常にチーム方針を念頭に置いている。丸の成功で若手起用に自信をつけた野村監督は、12年に劇的な世代交代を行う。

 その象徴が堂林翔太だ。初の1軍キャンプに参加し、オープン戦にも出場したが、思うような結果は出なかった。それでも野村監督は堂林のパワーに賭け、開幕1軍に抜てき。当時、オープン戦終盤の福岡ソフトバンク戦で訪れたヤフードームで、ソフトバンク・王貞治会長に「堂林をスタメンで使おうと思うのですが」と相談したほど思い悩んでいた。すると王会長から「自分が思ったとおりにやればいい」という言葉。これに後押しされ、堂林のスタメン起用を決意した。
 丸の時とは違い、オープン戦でも結果が出なかった堂林の起用は文字どおりの「博打(ばくち)」だった。しかし、若きスラッガーは指揮官の期待に応えて安打を重ね、本塁打を量産。同時に三振を繰り返し、三塁の守備ではエラーを連発したが、「将来の主軸として成長してほしい」という思いで1年間起用し続けた。

 シーズン後に野村監督は、堂林の起用について冗談っぽく本音を漏らした。「エラーや三振をする堂林を使い続けて、ファンからいろいろ言われた。それでも使い続けた俺も偉いだろ」。日本人の大砲をつくりたい――。堂林の起用は、将来のカープへの「投資」だったのだろう。

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント