世界8強へ!日本代表「次の一手」 ラグビーW杯に向けて課題解決を

斉藤健仁

アタックには課題も

突破するリーチ主将。アタックには課題も残った 【築田純】

 しかし、アタックに関しては、W杯でベスト8を目指すチームとしては、決して満足できる内容ではなかった。今春は「バリエーションを増やした」とジョーンズHCが言っていたとおり、順目に攻めていくだけでなく、SHの横にブラインドサイドからFWを走り込ませたり、インサイドCTBの横にもFWを立たせたり、逆サイドにもFWを配置させたりといった工夫も見られた。

 だが、アジアレベルでも相手が極端にインターセプトを狙ってきたり、SHを起点にした「9シェイプ」にプレッシャーをかけてきたりすると、攻撃にテンポが出ず、ハンドリングエラーも目立った。2人目、3人目の寄りも大事だが、ボールキャリアがミスをせず、レッグドライブしたり、相手のインサイドショルダー(タックルしてくる肩と逆サイドの肩)を狙ってショートステップを切って前に出たりすることが欠かせない。

 スーパーラグビーでも先発として活躍し、第3戦の韓国代表戦前に合流したHO堀江翔太副将(パナソニック)は「個々の体は強くなっているし、チームとしてどう戦うかイメージは共有できている」と成長した点を挙げつつも「プレッシャーの中でノックオンしたり、姿勢が高いと相手に絡まれたりといったミスを個々で反省して修正していかないといけない」と課題を口にした。

専門知識を持つ新コーチを招聘

課題を解決するために次々と手を打つエディー・ジョーンズHC(中央) 【築田純】

 ジョーンズHCもただ手をこまねいているわけではない。接点だけでなく、過去2年間、アタックに比べて本格的に着手していなかったディフェンスを強化するため、5月末からリー・ジョーンズ氏を招聘。5月25日まで香港代表HCだった人物で、過去にはウェールズ代表のアシスタントコーチも務めた。「非常に経験豊富で、彼が来てくれて幸いだった」(ジョーンズHC)

 5月26日にチームに合流したリー・ジョーンズ氏は「タックルには4つありますが、それを細かいところまで指導し、ディフェンスラインはラインスピードを上げてスペースを取っていきたい。また接点には人数をかけ過ぎているので、そうしないように正確性を求めていきたい」と抱負を語った。

 さらにジョーンズHCは、ラインアウトのコーチとして、昨年まで何度か帯同していた元イングランド代表主将スティーブ・ボースウィック氏を6月から正式にコーチに登用する。「W杯に向けて、すべてにおいて言えることですが、コーチングスタッフも改善していかないといけない」(ジョーンズHC)

「フィジカルなチームを圧倒したい」

「最後の国立」でW杯出場を決め、来年の本大会に挑む 【築田純】

 昨シーズンまでW杯での目標を「トップ10」と言い続けていた指揮官は、今シーズンになって「ベスト8」へと上方修正。それは、ひとえに強化が上手く進んでいるという手応えの証しとも言えよう。「アジアではセットプレーで圧倒できましたが、パスをしてもっとボールを動かしながらフィジカルなチームを圧倒したい。またW杯に向けてエリアを取るためではなく、相手のディフェンスを崩すためにキックを蹴りたい」とジョーンズHCはアタック&戦術コーチとしての顔ものぞかせた。

 ただ、日本代表はW杯過去7大会で1勝21敗2分という成績だ。目標とするベスト8は、予選プールで南アフリカ代表に負けたとしても、スコットランド代表、サモア代表、アメリカ代表に勝利しなければならない。ジョーンズHCを筆頭にした多国籍コーチ陣の下、日本代表はさらなる進化を遂げる。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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