レッドブルはPUに不満あり、次はホンダ?=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第28回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

ルノー製PUに不満のレッドブル

なかなかメルセデスに勝てないレッドブル。ルノーを見限り、他のパワーユニットを使うことを考えている? 【LAT Photographic】

 今季のF1はメルセデスAMGの逃げ切りレースが続いており、早くから開発を進め、自信たっぷりにパワーユニット(PU)のCG画像などを公表していたルノーにとって面目丸つぶれのシーズンになっている。開幕から5戦を消化して、メルセデスAMGの全勝。11日に決勝が行われたスペインGPではレッドブルのダニエル・リカルドが踏ん張ってなんとかルノーPUユーザーも3位に入っているが、劣勢は明らかでこれから残されたシーズンに向けていかに改良してくるかがキーポイントだ。

 ところが、このルノー製PUに関して「来年以降は使用したくない」と考えているチームがポロポロ出てきているという噂を耳にした。「シーズンが始まって5戦も消化したのに改良の余地が認められない。この調子だとこれから先も思いやられる」。このように考えるチームが出てきても不思議ではない。そして、そのように考えているチームの筆頭がレッドブルだという。

 レッドブルの関係者に聞くと否定も肯定もなし。まさか今、肯定するわけにはいかないだろう。なぜなら、レッドブルは以前メルセデス・エンジンへの変更を断念した経緯があるからだ。

レッドブルの狙いはF1復帰のホンダか……

 2010年、レッドブルはメルセデス・エンジンへの変更を検討した。しかし、当時メルセデス・エンジンのワークス・チームであったマクラーレンがこれを拒否。レッドブルはそのことを根に持っている。ゆえに、レッドブルのアドバイザーであるヘルムート・マルコ博士は「メルセデス・エンジンは欲しくない。彼らがわれわれに供給してくれるエンジンがメルセデスAMGチームと同じものとは限らない」と、現地の新聞に語っている。そんな状況でルノー製PUを失うと、レッドブルは走ることさえできなくなってしまう。「今はルノーに対して穏便に」というところだろう。

 しかし、レッドブルが新しい次のステップを探していることは確実だ。プライベートのレーシングチームが特定の自動車メーカーとあまりに長い蜜月時代を過ごすということはまずあり得ない。それが長くなればなるほど緊張は緩み、お互いに求める厳しさは姿を消す。競争の世界でそれは命取りだ。また、今回のようにチームか自動車メーカーかどちらかに相手に対する不信が生まれると、関係は長く続かなくなる。ゆえに、レッドブルが今、ルノーとの関係の先を模索していても不思議ではないし、行き着く先がホンダであることも不思議ではない。

再びホンダ栄光の時代が到来?

 実は、スペインGPではホンダ関係者とレッドブル首脳陣の接触もあったようだ。ホンダに尋ねると、レッドブルは表敬訪問をしたいくつかのチームの一つだという。15年はマクラーレンへのエンジン独占供給が決まっているが、16年から先は複数チームへのエンジン供給の可能性を残している。そのホンダには多くのチームからエンジン供給の打診が来ているというが、レッドブルもその一つなのかもしれない。

「これからF1の世界にお邪魔しようとしているわけですから、先輩のみなさんへのあいさつは欠かせません。レッドブルもその中の一つです」とは、ホンダ関係者の言葉だ。
 それにしても、2015年からのF1参入に関してはホンダは相当な覚悟を持って臨んでいるようだ。「参戦期間に区切りはつけない」とも言う。このホンダの積極的な姿勢はどこから来るのだろう? やはり「ホンダはF1があってナンボの会社である」ことを、社員自身が自覚しているのではないかと思う。そして、F1に参加するからには勝たなければ意味がないことも分かっている。かつてマクラーレンとロータスへ、あるいはウイリアムズへエンジンを供給してF1を席巻したホンダ。マクラーレンとレッドブルへのエンジン供給が決まれば、われわれは再びホンダ栄光の時代を経験できるかもしれない。

『AUTOSPORTweb』

【AUTOSPORTweb】

F1やスーパーGTの最新情報をリアルタイムでお届けするモータースポーツ専門サイト
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント