世間の見え方は自分の心の持ち方次第――石川遼の等身大
成田空港近くのファミレスで食事
“ハニカミ王子”とフィーバーを巻き起こした周囲の喧騒に戸惑った時期もあった石川だが、米ツアー参戦で「世間の見え方は自分の心の持ち方次第」と気付いたという 【写真は共同】
あなたがゴルフファンなら、その人物を石川遼に置き換えたらどうなるだろう? だが、これは単なるたとえ話ではなく、実際にそんな偶然が起きてもおかしくない今日この頃なのだ。
日本に一時帰国した5月上旬、名古屋で「中日クラウンズ」を戦い終えた石川は、その足で翌日の出国に備えて成田空港近くへと移動した。そして、その日の晩御飯は近くのファミレスで済ませたという。
「いやー最近です。今年に入って(ファミレスなんかにも)行けるようになってきました。なんか開き直って、もういっか! みたいな感じで」と、石川は無邪気に笑った。
小学生の頃からの目立ちたがり屋が…
「元々、小学生の頃から目立ちたがり屋の性格なんで、プロゴルファーになってああやってみんなに見られてというのは、夢が叶った状態で幸せだった。でも、注目されることであれだけ自分の心の中がドタバタしちゃう、外に出たら周りが気になっちゃうということは分からなかった…」
今なら冷静に振り返れるが、当時は1人で電車に乗ることも、ふらっと外食や買い物に出掛けることもままならなかったという。
転機は米ツアーへのフル参戦を始めたことで巡ってきた。昨年、国内ツアーに出場したのはわずかに4試合。それ以外の時間は、ほとんどを米国で過ごした。9月にはウェブドットコムツアーへも参戦し、ギャラリーが1人もいない中でのラウンドも経験した。日本であれだけのギャラリーやメディアを引き連れていても、アメリカに来ればこれから這い上がろうとしている何百人の1人に過ぎない。
「過剰に意識しすぎていた」周囲の喧騒
そして、はっきりと気が付いた。
「自分の勘違いだったというか、過剰に意識しすぎていたんだと思います。実は、周りが騒いでいる、騒いでいないっていうのは関係なくて、自分が落ち着いていなかった」
世間の見え方は、自分の心の持ち方次第。
「実際、ファミレスに行ったとき、他のお客さんに気付かれたけど、でも自分が落ち着いているので、あまり心の中がざわざわしなかった。むしろ、声を掛けてもらって嫌なことを言われたこともないし、“頑張ってください”とかすごくうれしいことばかり。それはスポーツ選手として最高に幸せなことだと思います」
「勝ってボーンと騒いでもらえるように」
22歳になって大人になった、という側面はもちろんある。だが、子供の頃から変わらないものも、やっぱりある。それは、“目立ちたい!”という願望だ。
「ずっと今みたいに静かなままじゃなくて、やっぱりこっちで勝ってボーンと騒いでもらえるように頑張らないといけないですね(笑)」
その機会は、次週テキサス州フォートワースで開幕する「クラウンプラザインビテーショナル」で訪れても不思議ではない。今なら、その時沸き起こるであろうフィーバーも臆することなく受け止められるはずだ。
(文・今岡涼太)
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