世間の見え方は自分の心の持ち方次第――石川遼の等身大

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成田空港近くのファミレスで食事

“ハニカミ王子”とフィーバーを巻き起こした周囲の喧騒に戸惑った時期もあった石川だが、米ツアー参戦で「世間の見え方は自分の心の持ち方次第」と気付いたという 【写真は共同】

 もしも、あなたが座ったファミレスの隣の席に超有名人が腰を下ろしたら、あなたはどう反応しますか? 気付かないフリをしながら横目で観察する? それとも、堂々とサインをねだる? もしくは、誘惑に負けてこっそり携帯カメラで写真を撮ってツイッターやフェイスブックに投稿する?

 あなたがゴルフファンなら、その人物を石川遼に置き換えたらどうなるだろう? だが、これは単なるたとえ話ではなく、実際にそんな偶然が起きてもおかしくない今日この頃なのだ。

 日本に一時帰国した5月上旬、名古屋で「中日クラウンズ」を戦い終えた石川は、その足で翌日の出国に備えて成田空港近くへと移動した。そして、その日の晩御飯は近くのファミレスで済ませたという。

「いやー最近です。今年に入って(ファミレスなんかにも)行けるようになってきました。なんか開き直って、もういっか! みたいな感じで」と、石川は無邪気に笑った。

小学生の頃からの目立ちたがり屋が…

 15歳で初出場したプロトーナメントで優勝し、一躍、全国の注目を集めたのは2007年。その後、09年には史上最年少で賞金王を獲得し、翌10年には世界最小ストロークの「58」を叩き出すなど、スターとしての輝きを存分に放った石川を、世間は当時の“ハニカミ王子”というニックネームを地で行くスポーツ界のプリンスとして大いにもてはやした。

「元々、小学生の頃から目立ちたがり屋の性格なんで、プロゴルファーになってああやってみんなに見られてというのは、夢が叶った状態で幸せだった。でも、注目されることであれだけ自分の心の中がドタバタしちゃう、外に出たら周りが気になっちゃうということは分からなかった…」
 今なら冷静に振り返れるが、当時は1人で電車に乗ることも、ふらっと外食や買い物に出掛けることもままならなかったという。

 転機は米ツアーへのフル参戦を始めたことで巡ってきた。昨年、国内ツアーに出場したのはわずかに4試合。それ以外の時間は、ほとんどを米国で過ごした。9月にはウェブドットコムツアーへも参戦し、ギャラリーが1人もいない中でのラウンドも経験した。日本であれだけのギャラリーやメディアを引き連れていても、アメリカに来ればこれから這い上がろうとしている何百人の1人に過ぎない。

「過剰に意識しすぎていた」周囲の喧騒

「なんか、こっちにいるとちっぽけな存在なんですよ」

 そして、はっきりと気が付いた。

「自分の勘違いだったというか、過剰に意識しすぎていたんだと思います。実は、周りが騒いでいる、騒いでいないっていうのは関係なくて、自分が落ち着いていなかった」

 世間の見え方は、自分の心の持ち方次第。

「実際、ファミレスに行ったとき、他のお客さんに気付かれたけど、でも自分が落ち着いているので、あまり心の中がざわざわしなかった。むしろ、声を掛けてもらって嫌なことを言われたこともないし、“頑張ってください”とかすごくうれしいことばかり。それはスポーツ選手として最高に幸せなことだと思います」

「勝ってボーンと騒いでもらえるように」

 尊大にならず、卑下し過ぎることもなく、ただ等身大の石川遼がそこにはいた。

 22歳になって大人になった、という側面はもちろんある。だが、子供の頃から変わらないものも、やっぱりある。それは、“目立ちたい!”という願望だ。

「ずっと今みたいに静かなままじゃなくて、やっぱりこっちで勝ってボーンと騒いでもらえるように頑張らないといけないですね(笑)」

 その機会は、次週テキサス州フォートワースで開幕する「クラウンプラザインビテーショナル」で訪れても不思議ではない。今なら、その時沸き起こるであろうフィーバーも臆することなく受け止められるはずだ。

(文・今岡涼太)
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