なでしこ、W杯出場決定も満足せず アジア杯制覇へ向けて、3戦を振り返る

江橋よしのり

活性化したチーム内競争

佐々木監督が「立ち上がりが悪かった」と振り返る初戦のオーストラリア戦では、なでしこの課題が浮き彫りとなった 【Getty Images】

 続くベトナム戦では、なでしこが序盤から圧倒的にボールを支配して4−0と完勝した。先制するまで43分と時間は掛かったが、前半からクロスで数多くの決定機を作った。後半にはコーナーキックから木龍七瀬が、そして右からのクロスに大儀見が飛び込んで追加点を挙げ、すでに選手を3人代えた86分には複数の選手が連動した崩しから、川澄がこの日2ゴール目を決めた。

 そして第3戦。引き分け以上でW杯出場が決まるというシチュエーションで、なでしこは控えメンバー中心の布陣で試合を迎えた。ヨルダンの特徴も事前にしっかり把握していたようで、右サイドハーフの中島依美を起点にしたサイドアタックから多くのチャンスを作った。その中島が2得点を挙げたほか、吉良千夏が代表初ゴールを含む2得点、阪口夢穂も2得点を決め、相手オウンゴールも合わせて7−0と圧勝した。シュートシーンにはいずれも迫力があった。テレビなどで戦いを見守った人たちは、ジリジリした過去2戦とは打って変わって、胸のすく思いとともにW杯出場決定の瞬間を見届けたことだろう。

 試合終了後、中島は「今日の相手に対してもうちょっとできるようでなければ、世界で戦うのは難しいと感じています。個人ではクロスの精度、シュートの決定力をもっと高めないといけません。また、タイミングよく中央に入るコンビネーションなどの質も高めたいです」と気を引き締めた。これからの1年間で、W杯のメンバー入りをかけたチーム内の競争が活性化する。

目標はあくまでもアジアカップ優勝

 アジアカップにグループステージ限定で参加した大儀見は、「まだ納得できないシーンも多くありましたが、進化に向けて楽しみな気付きもありました。選手としてどうあるべきかを、言葉ではなく姿勢で示しました。(そのメッセージを)チームメートたち自身に気付いてほしい」と語り、大会を後にした。大儀見と同じく過去2大会W杯に出場している宇津木瑠美は「代表であぐらをかいていられるポジションは一つもない。お互いをライバルとして意識することが、なでしこジャパンのレベルアップにつながると思います」との言葉を残した。

 そして、ヨルダン戦をベンチで見守った宮間は、W杯の出場権獲得にも満足した様子を見せようともしない。彼女たちの目標は、アジアカップを制覇することだ。「だから、ここがスタート地点です」と、キャプテンは言葉を締めくくった。

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著者プロフィール

ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子Players of the year投票ジャーナリスト。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも越えられる』(講談社)、『伝記 人見絹枝』(学研)、シリーズ小説『イナズマイレブン』『猫ピッチャー』(いずれも小学館)など。構成者として『佐々木則夫 なでしこ力』『澤穂希 夢をかなえる。』『安藤梢 KOZUEメソッド』も手がける。

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