スポーツ観戦のもうひとつの楽しみ方!? 「松原渓のスポーツ百景」
生かせそうなのは技術よりメンタル面
努力家・福原愛選手の話も参考に 【松原渓】
日本では、男子エースの水谷隼選手のメンタルの強さが光った。劣勢でも常に攻めの姿勢を貫き、敗れた試合でも「力を出し切った悔いのないゲーム」という感じが伝わってきた。
女子では世界ランク1位〜5位を占める卓球王国・中国の選手のメンタルの強さが印象的だった。ポイントを連取されたりスーパープレーを見せられても、顔色ひとつ変えることなく、ネットイン(球がネットにあたって相手コートに入る。不運としか言いようがない)で点を取られても、飄々(ひょうひょう)としているのは格好良かった。
団体戦ともなると、「自分が負けたら仲間に迷惑をかけてしまう」という不安はつきものだが、そういった不安がプレーにまったく出ないのは不思議だ。私も中学生のころは卓球大会でそういう局面に出くわすことがあったが、必ずと言っていいほど「ここで外してしまったら」という不安がよぎり、大体自らミスをして負けていたのを思い出した。
どうしたらメンタルが強くなるのか?
【Getty Images】
1960〜70年代にかけて、卓球日本代表選手団監督を務めた兒玉圭司氏(現スヴェンソン社長)のコラムを読んで、興味深いエピソードを見つけた。それは、「不世出の世界チャンピオン」と言われている中国の荘則棟選手に世界でただ1人、3勝1敗と勝ち越した日本の高橋浩選手の話だ。
高橋氏は「私は荘さんとはイメージの中では500回は試合をして勝っていましたので、自分としては503勝1敗という感じです」と答えたそうだ。イメージトレーニングでは、相手に勝つまでの過程を、会場の空気や観客の様子などまで具体的にイメージして、パフォーマンスを疑似体験すると良いそうだ。
私はこれまで、「失敗か成功か」というような場面では、どうしても失敗した時の不安が先行してしまっていたのだが、これからは普段の生活から意識して、良いイメージの方を大切にしようと思う。
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」(イタリアサッカー界の英雄ロベルト・バッジョの言葉)のように、勇気を与えてくれる言葉をストックしておくのも良さそうだ。
そんなわけで、「世界卓球」を見ながら、気づいたらメンタルトレーニングの資料を必死で探している自分がいた。卓球では、いつか、スマッシュをスマッシュで返す、そんなラリーをしてみたい。スカッとして気持ちいいだろうなぁ……。そのためにも、イメージトレーニングを頑張ろう。
1カ月後には、4年に1回のサッカーW杯が迫っている。純粋に「見て」楽しむのはもちろんだけれど、その舞台を目指す世界中のサッカー少年少女たちにとっては、最高のイメージトレーニングの舞台になることだろう。