必要不可欠な命題――ACLを奪還せよ。 Jの真価が問われるアジアでの戦いぶり
ラウンド16で全クラブが敗退
広島はラウンド16第1戦でウェスタン・シドニーに3−1と勝利し、2点のアドバンテージを得て臨んだ第2戦。2ゴールを叩き込まれ、ホームでの1失点に泣いた 【Getty Images】
昨年こそ柏レイソルがベスト4まで進出したものの、08年にガンバ大阪が優勝して以来、日本のクラブは決勝に1度も駒を進められていない。ベスト4も2度しかない。一体どこに、低迷の要因があるというのか。3つのキーワードをもとに、私見を交えながら検証していくことにしたい。
キーワード1:過密スケジュール
川崎はFCソウルに敵地で2−1と勝利したものの、2戦合計4−4とアウェーゴールの重みを味わう敗退となった 【写真:Yonhap/アフロ】
Jリーグ第7節(4月11日、12日)→ACLグループリーグ第5戦(15、16日)→J第8節(19日、20日)→ACL第6戦(22、23日)→J第9節(26日)→J第10節(29日)→J第11節(5月3日)→ACLラウンド16第1戦(6、7日)→J第13節(10日)→ACLラウンド16第2戦(13、14日)。
1カ月で10試合。ラウンド16に入る前に、疲労の蓄積も懸念されるスケジュールではある。JリーグとしてはACLと日程がかぶる第12節(5月6日)をACL出場組による対戦カードを7月に回しているが、配慮の面で注目したいのは金曜日のホーム開催。川崎がリーグ戦を1度、金曜日に戦っている(4月11日、3月にも1試合経験)。アウェーの貴州人和戦を中3日で臨んで1−0勝利し、1日分の前倒しが効果あったように感じた。
金曜日開催は、平日とあって集客の面でダメージを受ける可能性がある。しかし等々力陸上競技場の入場者数が1万7000〜1万9000人ほどで最近、推移しているなかで1万2379人は、まずまず健闘した数字ではないだろうか。
1日前倒しで連戦をスタートさせた川崎はリーグ戦の6試合を3勝2分け1敗で乗り切っている。クラブの理解が得られれば、前倒し開催の有効活用は1つの手だと言えるのではないだろうか。
その川崎はラウンド16で昨季準優勝のFCソウルに敗れることになるわけだが、韓国のクラブはここ5年間ですべて決勝戦に駒を進めている。Kリーグクラシックは今季から12チーム制になり、スコットランド方式で上位、下位に分かれての「決勝ラウンド」も昨季同様に採用されており試合数も多い。Jリーグと同じで5月3日まで11節を消化しているが、ラウンド16に進んだことで、リーグ12チーム中10位(5月3日時点)に低迷するソウルだけは10日のリーグ戦を回避できている。結果論と言えばそれまでだが、「ACL重視」の編成を考えるなら、ラウンド16に入る前の日程を再検討する必要があるのかもしれない。
キーワード2:経験値
広島はグループリーグで1勝もできなかった昨年の経験を踏まえながら、成長著しい若手を起用しながら厚くなった選手層をうまくやりくりしてラウンド16に進出した。しかし、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(オーストラリア)にホームの第1戦を3−1でリードしながら、アウェーの第2戦を0−2で落としてしまう。(2戦合計引き分け時は)アウェーゴール2倍のルールにより、涙をのむ形となった。結果的に見れば、ホームでの1失点が痛かったことになる。
C大阪は第1戦のホームで5失点、川崎も同じくホームで3失点。アウェーゴールが圧倒的な不利になるということを、身を持って味わったわけだ。アウェーゴールのルールで広島、川崎が負けたことからも、僅差の試合内容ではあった。
この経験値を持って来年も参加できるかどうか。アジアのレフェリーの特徴を知ったことも大きい。昨年、ベスト4まで進んだ柏も12年の経験を踏まえて戦えたからこそ。毎シーズン、上位がめまぐるしく入れ替わるJリーグの状況があるとはいえ、ACL出場チームが継続して次の年も参加していくということも“王座奪還”には欠かせない要素になってくるように思う。
ちなみに今年も昨年のACLを経験したなかで、「東」は広州、ソウル、浦項の3チームがベスト8に進出している。