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マラソン界で相次ぐ薬物違反に新傾向
主催者から報酬の全額返還要求も

過去のドーピング問題と異なる事情

ショブホワ(写真左端)のドーピング違反に見られる、「これまでとは異なる事情」とは?
ショブホワ(写真左端)のドーピング違反に見られる、「これまでとは異なる事情」とは?【Getty Images】

 ロシア人のマラソンランナー、リリア・ショブホワが、ドーピングを調べる生体パスポート検査で異常が見つかり、2年間の資格停止処分を受けることになった。陸上界のドーピングは昨年から相次いでおり、「ああ、またドーピングか」と思う人がほとんどだろう。しかし今回の出来事は、これまでのドーピング問題とは少々事情が異なる部分がある。


 元々、中長距離選手だったショブホワは、2009年にマラソンに転向。2回目のマラソン挑戦となったシカゴマラソンを2時間25分56秒で優勝し、翌10年のロンドンマラソン、シカゴマラソンでも優勝。11年ロンドンマラソンは2位、同年のシカゴマラソンではペースメーカーを付けて走り、2時間18分20秒で制した。さらに、09年−10年、10年−11年のワールドマラソンメジャーズ(以下、WMM)の総合優勝を果たしている。

 英国紙のガーディアンによると、WMM総合優勝の賞金だけでも約1億円になるとのこと。また、各レースの賞金、タイムボーナス、出場料などで、ショブホワが上記の結果から獲得した金額は、総額でおよそ2億円前後になると考えられる。


 WMMの主催者は、全額返還をショブホワに求める意向を示している。WWM開始時に、「WMMのレースを走った選手が、薬物使用が認められた際には、われわれは賞金の返還を求める」と強い口調で発表していたのが印象に残っている。WMMはウェブサイトでも「選手は出場した時点で、『ドーピング違反があった場合、主催者は賞金などの返還の要求する』という規約に同意するものとする」と書かれている。そのため、ショブホワがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に反訴することがあったとしても、勝ち目はないだろう。


 過去のドーピング問題と「事情が異なる」とコラム冒頭で述べたのは、主催者が選手に賞金の返還を要求している点にある。陸上では、これまで数多くのドーピング違反が見つかっている。直近であれば、トップスプリンターのアサファ・パウエル(ジャマイカ)、タイソン・ゲイ(米国)などが記憶に新しい。国際陸上競技連盟から毎月送られてくるニュースレターにも「今月見つかったドーピング検査陽性選手」リストがあるように、ドーピング問題は残念ながら驚くべきことではなくなってきている。しかし、メダルや記録の剥奪はこれまでにもあったが、賞金などの返還を求められたのは、陸上では今回が初めて。ダイヤモンドリーグなどでは、このような規約は設けられていないし、ほかのスポーツを見ても、非常にまれなケースと言える。

日本人選手にも被害

 ちなみにショブホワが優勝した09年シカゴでは那須川瑞穂(現ユニバーサルエンターテインメント)が7位、10年は吉田香織(※1)が8位、11年は福士加代子(ワコール)が3位だったが、今回の件で順位が一つずつ繰り上がる。3位の福士は2万5000ドルを受け取ったが、2位に繰り上がると倍額の5万ドルになる。


 また、ロンドンマラソンの結果を見ると、10年と11年に赤羽有紀子が出場しそれぞれ6位だった。しかし10年は優勝のショブホワと、2位で12年にドーピング違反で処分されたインガ・アビトワ(ロシア)がともに失格となったため、赤羽は4位に、11年は5位にそれぞれ繰り上がる。10年に6位として受け取った賞金は5000ドルだが、4位になると1万ドルと倍額に。11年は7500ドルを受け取っているが、5位になると1万ドルになる。ショブホワは日本のレースへの出場経験はないため、国内のレース主催者はショブホワから被害を受けていないが、同じレースに出場した日本人選手たちは順位、獲得賞金などで大なり小なり被害を受けている(※2)。


(※1)吉田香織は12年12月の検査で禁止薬物のEPO(エリスロポエチン)が検出され、2年間の資格停止処分を受けている。

(※2)違反者がもし賞金を返還しても、順位が繰り上がった選手たちに増額されるかは不明。

及川彩子

米国、ニューヨーク在住スポーツライター。五輪スポーツを中心に取材活動を行っている。(Twitter: @AyakoOikawa)

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