武豊キズナも飲み込まれた淀の魔物=目覚めた怪物フェノーメノ再び天下獲り
蛯名&フェノーメノが史上3頭目となる天皇賞・春連覇 【スポーツナビ】
フェノーメノは今回の勝利でJRA通算14戦7勝。重賞は2013年GI天皇賞・春、同GII日経賞、12年GIIセントライト記念、GII青葉賞に続き5勝目。天皇賞・春の連覇は1991年・92年メジロマックイーン、00年・01年テイエムオペラオー以来史上3頭目の快挙となった。
また、騎乗した蛯名は02年マンハッタンカフェ、13年フェノーメノでの勝利に続き天皇賞・春3勝目。同馬を管理する戸田博文調教師は昨年に続く同レース2勝目となった。
一方、クビ差の2着には武幸四郎騎乗の3番人気ウインバリアシオン(牡6=栗東・松永昌厩舎)、さらにハナ差の3着には田辺裕信騎乗の12番人気ホッコーブレーヴ(牡6=美浦・松永康厩舎)。1番人気に支持されていた武豊騎乗のキズナ(牡4=栗東・佐々木晶厩舎)は3着から半馬身遅れの4着、クレイグ・ウィリアムズ騎乗の2番人気ゴールドシップ(牡5=栗東・須貝厩舎)は7着に敗れた。
1番人気が勝てない春の盾、武豊キズナも……
道中は後方から2番手、折り合いもついておりスムーズな追走だったが 【スポーツナビ】
これは僕の勝手なイメージなのだが、天皇賞・春と言えば人気サイドで決着がつく傾向が強く、当然、配当はそんなに期待できない。馬券に大口を突っ込めない自分のような庶民にとっては、天皇賞・春とは純粋に“古馬最強は誰か”という勝負を楽しむレースなんだと思っていた。
でも、それはとっくに昔の話なんだなと、過去10年の天皇賞・春の結果を見ると、改めて思い知らされる。昨年の単勝1.3倍ゴールドシップも、一昨年の単勝1.3倍オルフェーヴルも馬券に絡むことなく敗れ去った。今やすっかり天皇賞・春は、“波乱のGI”の代名詞になってしまったようである(僕が競馬を見始めたころは、波乱のGIと言えば間違いなくエリザベス女王杯だったのだけど)。
ただ、今年こそはディープインパクト以来8年ぶりの1番人気馬の勝利を、ディープの息子・キズナと、ディープの主戦・武豊が決めてくれる――そんな期待感とムードが競馬場いっぱいに漂っているように感じ取れた。単勝オッズこそ1.7倍と、ここ2年の1番人気馬ほどの支持率ではないが、それは相手関係のレベルが違うから。むしろ、阪神大賞典で復調をアピールしたGI4勝ゴールドシップ、同じく日経賞快勝で完全復活モードのウインバリアシオン、そして昨春の覇者フェノーメノを向こうに回しての単勝1倍台は、突き抜けた人気と言っていい。
だが、その武豊キズナをもってしても、淀の魔物に飲み込まれるように4着に沈んだ。馬券圏内にすら届かない敗戦である。
“二段”伸びるはずの末脚が不発
懸命に大外から脚を伸ばす武豊キズナ(右)だが、いつものような伸び脚が見られない 【スポーツナビ】
レース後の武豊のコメントだ。道中は出遅れて最後方となったゴールドシップの、1つ前のポジション。1周目3コーナーの下り、大歓声のホームストレッチの前でも引っ掛かることはなく、じっくりと末脚をためながら追走するいつものキズナスタイルだ。2周目の3コーナー下りからジワリ、ジワリと進出。そして最後の直線は外に持ち出し、あとはダービーや大阪杯で見せた爆発的な末脚をいつものように繰り出すだけだった。
しかし、その“いつも”と違っていたのはここからだった。いったんはグイッと伸びかけるのだが、そこからもうひと伸びがない。
「本当はもう一段あるはずなんですけど、それが出なかった。本来の末脚ではなかったですね」
武豊が使った“もう一段”という表現は、キズナを管理する佐々木晶三調教師も似たようなことを言っていた。
「本来なら二段伸びするんだけど、伸びなかったねぇ……。状態は絶対に良かったと思うから、今日はよく分からないね」
上がり3ハロン34秒0は、ホッコーブレーヴと並んで、メンバー最速。普通の馬ならばよく伸びていると評価されるのかもしれない。だが、キズナにかかる期待は普通ではない。数字上では最速タイだからよく伸びているように見えても、やはり物足りなさが先行してしまう。事実、昨年のダービー、前走の大阪杯で見せた伸び脚はこんなものではなかった。