MLBで根付き始めたビデオ判定、先駆者・NBAの高いプロ意識から学ぶ

スポーツカルチャー研究所

日本上陸も遠くはない

複雑なプレーも多いNBAでは10年以上前からビデオ判定が導入されている 【Getty Images】

 ちなみに筆者がそのミーティングに呼ばれた理由は、日本のプロスポーツにおける利用状況のヒアリングが目的で、1969年から導入した大相撲の事例や、97年にMLBから日本に派遣された審判員が判定をめぐる抗議行為に恐れをなして帰国した様子などを話した(偶然にもその試合は、メッツに転職する前に筆者が在籍していたチームの試合で起きた)。当時はフィールド上の男たちの流儀とも言われる「書かれざるルール(アンリトゥン・ルール)」がまだ広く認識されておらず、審判ですら“やられたらやり返す”米国式の流儀と、問題が起きると一人の審判を大勢が囲んで抗議する日本球界とのギャップは、容易に埋まるようなものではなかった。

 あのミーティングから11年が経ち、MLBは本格的なビデオ判定導入に踏み切った。この流れは必ず近い将来、日本にもやってくるだろう。民主主義の国・米国で誕生した野球というスポーツは、微妙な判定の際には審判同士が話し合いで解決するという極めて民主的な運用で100年以上の歴史を刻んできた。

 これは君主国・英国で誕生したサッカーにおける主審のホイッスルや腕時計という絶対的な存在とは対照的で、野球とサッカーの成り立ちに両国の背景が垣間見えて非常に興味深い。

 スポーツの本質の一つは「ルール」。両チームの選手たちが公平なルールに則って勝ち負けを競うところに、スポーツの面白さは集約されている。社会的にも透明性や可視化が求められている昨今の日本において、プロ野球の判定をめぐる可視化は、案外すんなりと受け入れられるような気がする。その昔、ネット環境の整備とともにNBAがリーグを挙げてビデオ判定の導入に踏み切ったように、時代が求めていることに的確に応えていくことも、リーグビジネスが進むべき一つの方向と言えるだろう。

(スポーツカルチャー研究所 小島克典)

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