松坂大輔に蘇りつつある球威 「最愛ではない」リリーフで再起なるか

杉浦大介

幸いに働いている松坂のリリーフ

かつて“怪物”と言われた松坂も紆余曲折を経て、ようやく少しずつ再び良い方向に向かい始めた 【Getty Images】

 登板回数が増えた場合には健康面が心配されるし、制球の乱れ癖は接戦の終盤イニングでは不安が残る。そして何より、かつて“怪物”と言われた男とそのファンが、先発という役割にこだわるのも十分に理解できる。
 ただ……それでも筆者は、責任感が強く、三振も奪える現在の松坂が、リリーフ役に向いていないとは思わない。

「マウンドに上がるときの緊張感が先発とはやはり違いますね。先発のときは打たれたら自分の責任で、自分だけで済む。後ろで投げるときは先発ピッチャーの生活も懸かっている。責任は重いのかなと思いますけど」

 完璧主義者の気もある松坂にとって、たとえ打たれることはあっても、先発時のように中4日で必要以上に考える時間がないことは、今後もプラスに成り得るのではないか。出し惜しみなしに自信のある球を投げ込んでいくリリーフという役割を任されたことは、現時点では幸いに働いている感もある。

「今はまだ身体が元気なので大丈夫なだけかもしれないですし、これがずっと続けば疲労も溜まってくる。疲れの抜き方がまだ分からないですね。先発のときには決まったやり方があったんですけど。トレーニングの強弱、どうやって自分の身体をケアしていくかというのは今のところまだ分からないです」

 本人がそう言及している通り、調整面まで含め、新たな役割で証明していかなければならないことはまだ山ほどある。

再び良い方向に向かい始めたメジャーキャリア

 ニューヨークでの“セカンドチャンス”が、今後どんな軌跡を描いていくかは分からない。メッツのローテーションからケガ人が出た場合、速やかに先発に戻る可能性ももちろん残っているはずだ。ただ、ひとつだけ確かなのは、紆余曲折を経た松坂のメジャーリーガーとしてのキャリアが、ここで少しずつ再び良い方向に向かい始めているように思えることだ。

 再生の時間の中で、時に最愛ではないダンスパートナー(救援の役割)との交流が、多くを教えてくれることがある。だからあくまで個人的には、チームの勝利、先発投手の将来を背負い、終盤イニングのマウンドを任され続ける松坂の姿をもうしばらく見てみたい。たとえ苦しむことがあっても、その新たな経験は、来年以降にも何らかの形で必ず生きてくるように思えるからだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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