復帰前のホンダがなぜF1会見に?=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第26回
中国GPでホンダが異例の会見出席
ホンダはF1復帰前にもかかわらず、FIA記者会見に出席。実に異例のことである。後段右がホンダのF1プロジェクトリーダー新井康久氏。後段中央がFIAのF1担当責任者チャーリー・ホワイティング 【LAT Photographic】
ホンダがF1に復帰することを発表したのは昨年のこと。参戦は2015年からということだった。つまり、現在ホンダはまだF1に参戦していない。その自動車メーカーやチームの関係者がFIAの公式記者会見に出席するのは非常に珍しい。おそらく初めてだろう。FIAにそのことを尋ねると、担当者も「おそらく初めてだろう。少なくとも私が担当になってからは初めてだ」と答えてくれた。この会見には、ホンダ新井氏のほかに、ルノー、メルセデス、フェラーリといった自動車メーカーの技術担当が顔をそろえた。
FIAが求めていたホンダの模範的回答
F1は今年からパワーユニットが小排気量ガソリンエンジン+ターボチャージャー+エネルギー回生システムになった。このこと自体は世の中の流れにF1が敏感であったということで、メディアも支持こそすれ、反対の声は上げなかった。それでも、FIAはこの変革により強力なサポートが必要と考えたのだろう。そこで、現在F1に参加しているメーカーはもとより、まだ参戦しておらず、来年からの参戦を公表しているホンダにも登場してもらい、彼らがなぜF1に帰ってこようとしているかを語らせたのである。
ホンダ新井氏はその会見で、まさにFIAが求めていた模範的回答を口にした。「この新しいレギュレーションが施行されなかったら、ホンダはF1に帰ってこなかった。ホンダの復帰にはこの新レギュレーションが必要だった」と。その答えにウソはないし、自動車メーカーとしては環境が求めるクルマ(のパワーユニット)の開発は必須事項。その開発がF1などの厳しいレギュレーション下で行われることで、加速したり幅を広げたりする可能性は大きいはずだ。
新レギュレーションへのFIAの覚悟
では、チャーリー・ホワイティングの登場にはいかなる意味があったのか? FIAに尋ねたら、「FIAがどれほどの覚悟を持って新レギュレーションを施行したかを理解してもらうために会見に出てもらった」との答えがあった。これは裏を返せば、まだ新レギュレーションは全幅の信頼を得られていないということだろうか。それは、将来において今回の変革が失敗であったと言われることへの心配であり、その不安を取り除くためにホワイティングの会見参加は必須であったと理解すべきだろう。
FIAも苦心している。
『AUTOSPORTweb』
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