出遅れた“女王”INAC神戸
4年ぶりのリーグ連敗で試されるチーム力

主力の退団や監督・GM交代による影響

リーグ開幕戦、ホームで浦和Lに敗れ肩を落とすINAC神戸のイレブン
リーグ開幕戦、ホームで浦和Lに敗れ肩を落とすINAC神戸のイレブン【写真は共同】

 2014年のプレナスなでしこリーグは、開幕から3試合が経過した。リーグ初制覇から3年連続優勝を続けているINAC神戸レオネッサが、今季は第3節終了時点で1勝2敗の7位と出遅れている。


 INAC神戸は3月30日(日)に地元ノエビアスタジアム神戸で、浦和レッズレディースと開幕戦を戦った。2度先行され2度追いつく力を見せつつも、アディショナルタイムに突き放されて2−3で敗れた。


 4月5日(土)の第2節はベガルタ仙台レディースとのアウェー戦。両者とも決め手を欠く展開が続いたが、88分に失点して0−1で敗戦した。INAC神戸のリーグ戦連敗は、2010年4月から6月にかけて4連敗して以来の出来事となった。


 4連敗を喫した2010年は、澤穂希らの大型補強が行われる前の年だ。複数の主力選手の退団、ゼネラルマネージャーと監督の交代が重なった年でもある。新戦力の開花を待ちながら、メンバーに合った新戦術を1試合ごとに模索したプロセスは、今季に重なる。


 今季のINAC神戸も主力選手が相次いでチームを離れた。近賀ゆかりとチ・ソヨンはイングランドへ、ベッキーは米国へとそれぞれ完全移籍し、川澄奈穂美とゴーベル ヤネズは8月まで米国リーグと契約した。


 フロントにはガンバ大阪の前強化本部長・山本浩靖氏を招へいした。山本氏は指導者としてのキャリアを女子サッカーからスタートさせた人物で、1990年代にはアトランタ五輪に代表選手2名を送り出したパナソニック・バンビーナで監督を務め、日本女子代表コーチも一時期、兼任していた。さらに、監督には前ガイナーレ鳥取の前田浩二氏が就任。前田監督は、Jリーグ26戦未勝利という不名誉な記録を引き合いに出され、それを元にINAC神戸の今季を不安視する声も、外部からは聞かれた。

開幕2連敗の要因は“動きの質”

 しかし、選手たちが監督から感じ取るイメージは好意的だ。おおむね「いいプレーにはいい、悪いプレーには悪いと、はっきりした評価を即座に下してくれる。情熱的に接してくれている」という姿勢に、女子選手たちは安心感を抱いているようだ。実際に練習風景を見てみると、前田監督は走るトレーニングや体幹補強トレーニングなどを、選手たちと一緒にこなしていた。2月3日生まれの前田監督は、今季の始動後、選手、コーチ陣の中で最初に誕生日を迎えたため、その日の練習終了後には、INAC神戸恒例「お祝いの水掛け」をされる第一号となった。冷たい風が吹く2月の神戸で、ずぶぬれにされた前田監督は、それでも終始にこやかだった。選手たちとのコミュニケーションは良好で、「ともに今季を戦う仲間」として受け入れられている様子が伝わってきた。


 ところがINAC神戸は、開幕を迎えると、肝心なサッカーで2試合続けて結果を出せなかった。


 連敗の要因は、各選手の動きの質にあった。各選手がチームの陣形や自分の持ち場、役割にこだわりすぎて、臨機応変なポジショニングで相手の先手を取ろうとする意識が今ひとつだった。選手が大幅に入れ替わったチームによく見られる傾向だが、新チームで初めての公式戦となると、リスクをともなった決断を自ら下そうとする選手がなかなか現れない。対戦相手の浦和、仙台に守りやすい状況を与えてしまった。


 また、分かりきっていたことだが、流れの悪い時に個人の力で打開できるチ・ソヨンとヤネズの不在も、苦しんだ原因だ。昨季の公式戦32試合(リーグ戦、カップ戦、国際女子クラブ選手権、皇后杯)で、先発メンバーに2人とも名前がなかった試合は、ゼロ。交代等で2人が同時に不在となったのも、わずか2試合、時間にしてたったの30分程しかなかった。今季は「苦しい時の外国人頼み」が通用しない。


 それでも第3節、アルビレックス新潟レディース戦で、INAC神戸の分厚い攻撃が蘇った。

江橋よしのり
江橋よしのり

ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子Players of the year投票ジャーナリスト。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも越えられる』(講談社)、『伝記 人見絹枝』(学研)、シリーズ小説『イナズマイレブン』『猫ピッチャー』(いずれも小学館)など。構成者として『佐々木則夫 なでしこ力』『澤穂希 夢をかなえる。』『安藤梢 KOZUEメソッド』も手がける。

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