出遅れた“女王”INAC神戸
4年ぶりのリーグ連敗で試されるチーム力

第3節の初勝利で得た手応え

今季より監督には前ガイナーレ鳥取の前田浩二氏(後列中央)が就任。フロント・監督・選手ともに大きく入れ替わって新生INACとなった
今季より監督には前ガイナーレ鳥取の前田浩二氏(後列中央)が就任。フロント・監督・選手ともに大きく入れ替わって新生INACとなった【写真は共同】

 4月13日(日)の第3節、INAC神戸は新潟L戦で、今季初勝利をやっと手にした。ルーキー増矢理花がセットプレーから2ゴールを挙げ、2−0と快勝した。過去2戦と見違えたのは、選手たちの流動的なポジショニングだ。一人がアクションを起こすと、それが呼び水となって、他の選手も連鎖的に空いたスペースに走り込む。スイッチを入れる役目を果たしたのは、トップ下の増矢と、センターFW(CF)の高瀬愛実だった。


 増矢の動きは、対戦相手の新潟Lによる「INAC神戸対策」を逆手にとった。DFからMFにパスをつなぐ際、澤穂希、中島依美の両ボランチには相手の厳しいマークが待ち構えていた。そこで増矢は、味方DFから見てボランチの2人よりも1列奥(つまり相手MFの背後)からパスコースに顔を出し、ボールを引き出した。2戦目までの増矢は、高瀬にボールが入った時に絡むか追い越す、あるいは高瀬同様、最前線でボールを受ける仕事をこなすことに精いっぱいだった印象だが、この日はそうした「崩す局面」の一歩手前にある「組み立てる局面」でいい働きをした。増矢は「顔の出し方」をよく知る選手なのだと、強く印象づけられた。この試合のテレビ解説を務めた元なでしこジャパン・宮本ともみさんが言及したとおり、増矢はボールを受けた後、狭いスペースで鋭く前を向くターンの動作でも、相手をかく乱した。

試される新生INAC神戸のサッカー

 CFの高瀬の考えも、3戦目にしてチームに浸透した印象だ。90分間を通して、高瀬が相手センターバック(CB)の2人を背負いながらボールを受ける場面は、ほとんどなかった。CBの前から姿を消し、特に左右に大きく動いてボールを呼び込んだ。CBがついてくれば、中央のスペースが手薄になる。そこに両ウイングの京川舞と田中陽子が斜めの動きで突っ込んでくる。相手は後手を踏んだ。まるで高瀬が、「私はおとりになる。今は私にパスを出さないでほしい」というメッセージを、無言で味方にしっかり伝えているかのようだった。


 増矢と高瀬が、ボールを受ける動きを改善したことで、INAC神戸はボールをキープすることができた。キープできるということは、後方から味方が攻め上がる時間を稼ぐことができることを意味する。澤も中島も、サイドバックの渡辺彩香と野口彩佳も、ここぞというタイミングで攻め上がり、チャンスを多く演出した。


 INAC神戸の次節は、4月19日(土)。カンコースタジアムに乗り込んで、岡山湯郷ベルと対戦する。湯郷ベルには昨季、リーグ戦で3年ぶりの黒星をつけられた相手だ。前線からのしつこい守備は健在のようだが、今季は失点もかさんでいる。湯郷ベルのプレッシングをかいくぐるには、増矢、高瀬をはじめ、選手たちの流動的なポジショニングが、やはり欠かせない。一方守備の面では、ワンチャンスを狙ってくる相手の、宮間あやからの執拗な縦パスに警戒が必要だ。INAC神戸も昨季以前から、DF陣が1対1の状況にさらされると、脆さを露呈している。DFを危険な状態にさらさないためにも、ボールを持ち続けること、奪われたらすぐに奪い返すことが肝要となる。INAC神戸のサッカーが、今週末もまた、試される。

江橋よしのり
江橋よしのり

ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子Players of the year投票ジャーナリスト。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも越えられる』(講談社)、『伝記 人見絹枝』(学研)、シリーズ小説『イナズマイレブン』『猫ピッチャー』(いずれも小学館)など。構成者として『佐々木則夫 なでしこ力』『澤穂希 夢をかなえる。』『安藤梢 KOZUEメソッド』も手がける。

スポナビDo

イベント・大会一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント