日本ハムが忘れてはいけない大谷への責務 岩本勉氏が問う「“二刀流”の育成」

ベースボール・タイムズ

昨季は「試合に勝つための“二刀流”」

バッティング技術も「チームトップ、リーグトップクラス」。勝つために打者・大谷の技術は捨て難い。だから、岩本氏は「大谷をベンチに追いやる選手が出て来てほしい」と話す 【写真は共同】

――これまでも至る所で議論されてきた大谷選手の育成プランですが、岩本さん自身は大谷選手を投手として育てていくべきだと考えているのですか?

 メジャーリーグには彼のようなバッターが山のようにいます。でも、彼のように球速160キロを計測したピッチャーというのは世界中でも数えるほどしかない。その中に彼は入っているんだから、やはりそこを伸ばしてほしい。メジャーを目指すなら、僕は絶対にピッチャーだと思います。そうしないと彼の野球人生が遠回りするし、崩れてしまうように思います。

――それでも“打者・大谷”の魅力は捨てきれないですが?

 バッティングは間違いなく良いです。チームトップクラス、パ・リーグの中でもトップクラスのバットコントロールの良さを持っています。現状、彼のこの打者としての能力を使わない手はない。だから、チームとして試合に勝つために大谷くんを打者として使わざるを得ないというのが、現時点での“二刀流”だと思います。でも、成績的には昨年は決して満足できるものではなかった。昨年に続いて今年も「宙ぶらりん」のまま終わるのは許されないですよ。

――1年目は、投手として3勝0敗、防御率4.23。打者として打率2割3分8厘、3本塁打、20打点でしたが、“宙ぶらりん”という印象ですか?

 すべてが初めてのことで仕方のない面もあったけど、昨年は大谷くんの「100」の力を、投手と野手で「50」ずつに半分に分けたという感じでした。両方を足したら確かに「100」になって頑張ったとなりますが、それでは“二刀流”をやっている意味はないでしょう。投手でも野手でも、どちらか片方だけなら昨年の大谷くんの成績を残せる選手は他にもいっぱいいますからね。日本ハムに入団したのが正解だったということを証明するためにも、大谷翔平の独り立ちというものを今年中にやっておかないといけないです。

大谷をベンチに追いやる選手、出て来い!

――昨シーズンから今季に生かせる部分があると思いますが、反省点はどういった部分だったとお考えですか?

 昨年、チームがシーズンを戦う中で一番の鍵が、「日本ハムの大谷翔平」にするのか、「大谷翔平の日本ハム」にするのかということでした。結果的にチームは最下位となって、「大谷翔平の日本ハム」になってしまったと思います。ライトのレギュラーも最後まで決められなかったですからね。だから今季、チームが勝つために必要なのは、大谷くんをベンチに追いやるぐらいの選手が出て来ること。例えば、谷口雄也選手だったり、杉谷拳士選手だったり、新人の岡大海選手だったり……そういう選手がきちんとレギュラーを奪って、「あっ、ベンチにまだ大谷がいたわ。ラッキー!」というチームにならないといけないです。

――大谷選手個人の存在がチーム全体に与えた影響は大きかったのでしょうか?

 大きかったですね。チームが犠牲になった部分もあったと思います。でも大事なのは、今後、結果を出すことです。今季、大谷翔平が大活躍してチームが優勝するとします。そうなった時、「去年は辛抱しました。チームが犠牲になったかも知れませんが……」となれば、周囲は全員納得できると思います。

――最後に、今季の大谷翔平に期待するものは?

 まずは先発ローテーションで2ケタ勝利です。昨年は結果的に“宙ぶらりん”という言葉が残った。いろんな意見はあります。でも、そういうものをすべて払拭させるためにも、今年は非常に重要なシーズンになります。ただ一つ言えることは、2年目を迎えた今でも大谷くんが“二刀流”への期待感を漂わせているということです。これはやはりすごいことですよ。

(取材・文:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

2/2ページ

著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント