NPB審判も参加する「第23回アンパイアスクール」”楽しく学ぶ”先に目指すのは「減少しつつある審判の人口拡大」
【©白石怜平】
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11月30日〜12月1日の2日間、千葉県内で行われた「第23回アンパイアスクール」。
現役のNPB審判員も講師を務めるスクールで、アマチュア審判員からこれから志す初心者まで”誰でも参加できる”ことが魅力の一つ。
カリキュラムは基本の動作に続き、球審と塁審の連携や試合形式を通じての実践へと広がっていった。
判定は目だけなく”耳”でも行う
審判員としての動作全ての基本が凝縮された練習「GO(走り方や足の運び方)- STOP(止まり方)- CALL(ジェスチャーの仕方)」や、塁審が1塁と2塁のプレーに備える「ピボットターン」の講習が行われた。
球審の動きに続いて、一塁へと移りフォースプレーでの見方を学んでいく。
講師をNPB審判員の鈴木宏基氏にバトンタッチし、一塁で判定する際のポイントなどを明示した。
「ポイントは2つあります。まずは距離。一塁から5〜6mの距離に立ちます。近すぎると送球が自分のところに逸れてくる可能性があることと、全体像が見えない。また、後ろに離れすぎると、送球が逸れた場合に走る距離が長くなってしまいます。
2つ目は角度。捕球した野手からの送球に対して90度の位置です。一塁手は送球に対して伸びて捕りに行きます。そうすると足が離れる方向は送球の方に離れやすいからです。ここを見るためです。
もう一つ見なければいけないのは打者走者の足です。ベースをしっかり踏んでいるかを見れるのが90度の位置なのです」
一塁では角度と距離が大切になってくると話した 【©白石怜平】
「判定をするときは目と耳を使います。ベースを踏む「絵」と捕球の「音」を比べて判断します。アウトのときは、目で捕球をしているのを確認したらジャッジします」
球審・塁審のフォーメーションは?
NPB審判員の山本力仁氏が講師となり、明るいキャラクターでユーモアを交えながら楽しい雰囲気をつくり出した。
「外野フライが上がった時にイージーフライ、つまりトラブルボールではない場合は、例えセンターからライト側の打球であっても球審が判定します。
その時も”止まって見る”ことが最優先です。視線がぶれてしまわないようにです。トラブルボールは野手の動きを見て判断します」
活気ある講義を行った山本氏 【©白石怜平】
①ファウルライン際の打球
②外野手が前進して、地面すれすれで捕るような打球
③外野手が背走するフェンス際の打球
④複数の野手が追いかける打球
上記4つの種類で定義されている。山本氏はトラブルボールの場合についても実践を交えて解説した。デモンストレーションでは、
「“I am going out!”」(塁審が打球を追う)
「I’ve got a runner!」(球審が走者を受け持つ)
とそれぞれが声を掛けながら一連の流れを見せた。
「球審は『僕がランナーを見ますよ』ということで、球審は打者走者を見ます。あくまでも打球優先です。ボールがあるところにプレーが生まれます。
大事なのはキャッチかノーキャッチか、そこから判断して行きます。これがトラブルボールの場合のフォーメーションです」
球審と塁審のフォーメーション別にも展開された 【©白石怜平】
ゴロにおける判断基準になる「プレッシャーボール」
これは上のトラブルボールとは別の定義として、
「3種類ありまして、二塁手が審判の方に向かって激しく寄ってくる打球。2つ目は二塁手が一・二塁間のゴロを深いところで捕球して一塁に送球する時。つまり、自分に送球が当たる可能性もしくは首を強く振り向かないと見えない時。
後はライン上のゴロを一塁手が捕球して、カバーした投手にトスする場合。塁審がベースの近くに入り込みすぎてしまうと一塁手がブラインドになってプレーが見えないためです。この3つがプレッシャーボールです」
プレッシャーボールの説明をした鈴木氏 【©白石怜平】
「このプレーになるかならないかを最初に読んでください。二塁手よりも自分側に打球が飛んだらまずそのプレーを見ます。
プレッシャーボールと読んだ場合、ファールテリトリに2・3歩動いて判定します。ならないと判断したら中に2歩入って判定を行います」
と強調して伝えており、山本氏もフォーメーションの中で内野安打や悪送球といった場合を想定した際に、
「プレッシャーボールであるかを最初に判断します。内野安打や悪送球の場合は打者走者と交錯する可能性があるので、塁審はファールエリアの方に避けます。その代わり、球審が中に入って1塁の帰塁や2塁でのプレーを見て判定します」
と述べた。この日グラウンドで行われた講義の中で多くの時間を割いたトピックとなっていた。
4班に分かれてグラウンドとブルペンに
グラウンドでは中央学院大学硬式野球部協力の元、ゲームノックを通じて状況別の判定を行った。
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ゲームノックを通じて状況別に判定できる機会になった 【©白石怜平】
時には悪送球のシーンも演じてプレッシャーボールの判断も混ぜるなど、ここまでの約2時間の教えが凝縮された形になった。
それぞれが終え列に戻ると拍手やハイタッチで迎えられ、一緒にチェックしていたNPB審判員からも即フィードバックを受けることもできた。
一度終えるとフィードバックと質問もすぐに行える 【©白石怜平】
「右手は軽く握り拳、左手は自分の膝に添えてあげる。ファールで骨折してしまうリスクがあるからです。突っ張った体勢になるとどうしても骨が力を受けようとして衝撃が強くなってしまいますので、手の位置は本当に大事です。
後はワンバウンドであっても必ず目でボールを追うこと。顔が動くと正確に判定ができないので、これが一番重要です」
【©白石怜平】
判定とフォームについても丁寧に指導した 【©白石怜平】
審判が楽しむことで選手も「審判をやりたい」と思えるように
「スクールを通じて審判への興味をさらに持ってもらいたいです。僕もアマチュア時代、当時NPBの審判から話を聞けた時は『そんな考え方でやってるんだ』って気づくことができて探究心がくすぐられました。
僕らが声をかけることで、受講者のモチベーションが上がれば嬉しい限りです」
自身もアマチュア時代、NPBの審判から教わったことがあったという鈴木氏 【©白石怜平】
それは鈴木氏も「今審判の人数が減っているので、拡大を一番目指している」と共通の認識を持っていた。そのために、上で述べたモチベーションが大切になると考えている。
「『やらされている』ではなく、『やりたい』という気持ちを持っていただく。それで、『もっと上手くならないきゃ』と前向きに取り組むところに導いていきたい。
なので、楽しくやってもらうのが一番ですし、審判が楽しんでやっている姿を見た選手が『自分も審判をやってみたい』と思ってもらえることにつながると思います」
今年度も無事終了したアンパイアスクール。参加し44名の審判員が新たなスキルとモチベーションを持って各カテゴリの野球界を盛り上げていく。
(取材/文/写真:白石怜平)
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