「第23回アンパイアスクール」現役NPB審判から指導を受けられる伝統あるスクールは”審判は面白い”と感じられる機会に
【©白石怜平】
これから志す初心者含め”誰でも参加できる”このスクールでは、現役のNPB審判員から直接指導を受けることができる。
44人の受講者が門を叩いた今回も、アマチュア球界で審判を務めている者が更なるスキルアップに、また第一歩を踏み出す者にとって新たな道を開く期間となった。
NPB審判も指導する”誰でも参加できる”スクール
講師はアマチュアそしてNPBの現役審判が務めるスクールとして展開されている。
参加者は各地域やカテゴリでの連盟に所属している現役の審判員から、これから審判に挑戦したいと考えている者まで、幅広い対象であることが特徴の一つ。
NPB審判員の指導が受けられる誰でも参加可能なスクール 【©白石怜平】
「アマチュア審判の場合ですと、各団体の講習会があります。そこに所属していない方あるいは団体の垣根を超えて、さらにプロの審判の方から直接指導をいただける唯一のスクールです。
受講生の方は全くの初心者の方から、すでに公認審判員1級を持っている方まで来ており、そういう講習会は日本で他にはない。
NPBだけではなくアマチュアのインストラクターが来て、グラウンド上でお互いナレッジ共有もしながら、かつ”誰でも参加できる”。そういう講習会です」
開催の背景などを語ったBFJの桑原和彦氏 【©白石怜平】
「全ての団体に当てはまるのですが、審判のなり手不足と高齢化が課題としてあります。
講習会では、肩肘張らずにプロの方から(球審と塁審1人の)2人制という最もベーシックなものを学んでいただきます。
2日間を通じてこれから審判を目指す方たちには『審判って面白いな』『もっとやってみたい』と感じてもらうきっかけになればと思います。
各団体で務められている方は、特にNPBの審判は世界で最新の知識と技術を持っているので、さらなるスキルアップの場として吸収してほしいです」
NPB審判からも直接教わることができる唯一のスクール 【©白石怜平】
最も基本の練習である「GO-STOP-CALL」
本稿では主に初日の実践編を特集していく。
最初のカリキュラムは審判において最も基本とされる「GO-STOP-CALL」。
GO-STOP-CALLは審判員として大切なジェスチャーの基本の型と、止まってプレイを見るための動作(走り方・足の運び方・止まり方)を身につけるための練習である。
最初はBFJ側の講師として高橋進也氏が前に立ち説明を行った。
高橋氏はWBSC主催の国際大会で審判員を務めており、9月に中国で行われた「第5回 WBSC U-23野球ワールドカップ」にも派遣された。
国際試合でも多くの試合を試合を裁いている高橋進也氏 【©白石怜平】
「もし分からなくなった時に、立ち返るのがGO-STOP-CALLです。
自分のリズムを保ちながら、どちらの足からスタートしてどちらの足から止まってコールするか。
とても奥が深いものなので、それをずっと頭に入れてGO-STOP-CALLに立ち返れるようこの基本を大切にしてください」
まずコール実践から開始した。アウトの際の手の位置や視線の位置といった形を解説し、数をこなしていく。
「セットポジション。コール!」の合図と共に、受講者たちの大きな声が響き渡った。
揃った動きでジャッジを決める受講者 【©白石怜平】
その後は歩きを混ぜると、「歩く姿も見られますよ。格好よく歩きましょう」と高橋氏は一挙手一投足に目を配ると、最後は走ってのGO-STOP-CALLという完成系で締めた。
受講者はみな軽やかな足取りと空に響く大きな声でアピール。途中NPBの審判員がお手本として7人が横に並んで見せ、一層迫力が伝わってきた。
NPB審判員もお手本を見せた 【©白石怜平】
「アウトは腕を上げるのではなく”叩く”んです。ドアをノックする意識です。そして最後に手を握ります。これがポイントです。
セーフは真っ直ぐ横に出すのがポイントで、できるだけ速く。この動きを速くすることが”説得力を上げる”ことになります」
平林氏が説得力を出すための動作を説明した 【©白石怜平】
「GO-STOPの練習で一番大事なのは、止まる時にスムーズに止まれること。試合では起こり得ますが、全力で走って急ブレーキして止まって見ようとして止まれない。
なので『どのタイミングで止まれるか』を計算し、正しい姿勢でセットできることを考えながらやる。その基本がGO-STOP-CALLの練習です」
「ピボットターンが上手な審判は2人制の審判が上手」
ピボットターンとは1塁にいる塁審が1塁と2塁のプレーに備えるため、1塁・2塁を結ぶ線の内側に位置して行う動作。
平林氏が引き続き解説し、実践の前にピボットターンの説明と重要性を説いた。
「例えばバッターがレフト前ヒットを打ったとします。(2人制の場合)塁審が一人しかいません。打者走者が二塁へ行ったとしたら、その動きに先行して二塁や三塁のプレー、あるいは一塁に戻って見に行きます。
このピボットターンが上手な審判は2人制の審判がすごく上手です。これはすごく大事なことなんです。
綺麗なピボットターンを見せたら、ベンチから『この審判は上手な人だな』あるいは、『この審判は信用できそうだな』と思ってもらえる。これはとても大事なことです」
実践ではベースに見立てて印を置くコーンドリルという練習を行い、各塁に辿り着くと大きくジャッジした。
直前で練習したGO-STOP-CALLの動きや平林氏の教えも早速アウトプットする機会になり、全員が伝わりやすいアクションで判定をコールした。
【©白石怜平】
解説の後行われたコーンドリル 【©白石怜平】
投球判定するための正確な位置とタイミング
まずは各用語の解説と実演を交えながら行った。
その一つが「スロット・ポジション」。このポジションは、“打者と捕手の間”に位置する。
投球動作に入る際にこのポジションからスタンスを取る「オン・ザ・ラバー(On the rubber) 」の解説とともに注意点を示した。
「オン・ザ・ラバーでは右打者の場合、右足・左足の順で入ってもらいましたが、これには理由があって、スロット・ポジションという空間ができて死角をつくることなく投球を判定できます。
もし捕手が打者寄りになっても体が捕手より外側に出ないように、足の幅を調整して必ず捕手の後・打者側から見るようにします。
大事なのは、捕手の頭より自分の顎が上に来ることです。そうすることで、外角低めの投球も正確に判定できるようになります。(姿勢が)低すぎると低目の球が視界から消えてしまうので注意してください」
正確に判定するための立ち位置を丁寧に解説した 【©白石怜平】
「速ければ速いほど間違いが増えます。キャンプの時に『リリースをしたら(捕手と)半分の距離で判定を出すこと』を試してみたら散々な結果でした。
捕手が捕って『よしストライク!』というのを自分の中で一度決めてからジャッジを出すようにしてください」
【©白石怜平】
そしてカリキュラムは塁審そしてお互いの連携動作へと入っていく。
(取材/文/写真:白石怜平)
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