フィテッセはチェルシーのオランダ支店!? 前オーナーの暴露で起こった騒動

中田徹

フィテッセは3年以内の優勝を掲げていたが……

フィテッセのオランダリーグ優勝は“ロンドン”が許さなかったとしたならば… 【Getty Images】

 オランダ1部リーグに属するフィテッセの前オーナー、マレブ・ジョルダニアが「チェルシーはフィテッセが優勝するのを許さなかった」と発言し、KNVB(オランダサッカー協会)を巻き込む騒ぎとなっている。

 現役時代はグルジア代表としてならし、名門ディナモ・トビリシの監督やオーナーも務めたジョルダニアは「(チェルシーのオーナー)アブラモビッチにサッカーを教えた男」という触れ込みで2010年8月、フィテッセのオーナーに就任した。実業家としてもやり手だったらしいが、そのビジネスの実態は不明で、オランダでは「謎の富豪」として見られていた。

 会長就任お披露目会見でジョルダニアは「3年以内にオランダリーグで優勝してみせる。そのための資金提供は惜しまない」と大見得を切った。チェルシーとのコネクションを築いたフィテッセは毎年、若手の有望選手を借り受けながらチームを強化。順位を15位(10−11シーズン)、7位(11−12シーズン)、4位(12−13シーズン)と上げていったが、念願の優勝はかなわなかった。

謎に包まれたジョルダニアの去就

 13年10月、突然、ジョルダニアはフィテッセの株式をロシア人の土地デベロッパー、チギリンスキーに譲り、オーナーの職を辞した。その理由は謎のままで、「おそらく目標としていた3年以内の優勝ができず、“ロンドン(チェルシー、もしくはアブラモビッチを指す)”からクビを切られたんだろう」と噂された。

 しかし、今回のジョルダニアの暴露が事実なら、どうやらチェルシーはジョルダニアの優勝への野心が邪魔となり、自分たちがコントロールしやすい人材としてチギリンスキーをフィテッセに送り込んだようなのだ。

 それを裏付けるのが4月1日付けのオランダ全国紙『デ・テレフラーフ』だ。ジョルダニアは「フィテッセのサポーターに本当の話しをしたい。私はチームをオランダのチャンピオンにしたかった。しかし、“ロンドン”はそれを許さなかった。野心は素晴らしい。だが、フィテッセはチェルシーによってチャンピオンズリーグ(CL)に参加する事が許されなかったのだ」と暴露した。

 UEFAには「同一のオーナーが所有するクラブが、同じ大会に出場してはならない」というルールがある。書類の上ではチェルシーのオーナーはアブラモビッチで、フィテッセのオーナーがチギリンスキーだったとしても、チェルシーの意向によって人事が決まり、チームの戦力のさじ加減もとられているとするならば、フィテッセはチェルシーのアーネム(フィテッセの本拠地)支店と見なすことができる。
 昨季、1月末時点で4位だったフィテッセは逆転優勝を目指して補強交渉を進めていたが、土壇場でチェルシーから“待った”が掛かった。これを関係者たちは「“ロンドン”はフィテッセが強くなりすぎるのを好まなかった」と受け止めた。

 昨季までクラブのテクニカル・ディレクターを務めたテッド・ファン・レーウウェンはオランダのテレビ局『NOS』に対し「チェルシーにとっては期限付き移籍で貸し出した選手の成長だけが肝心で、タイトルを取る事なんてどうでもよかった。お金を出す者がすべてを決められる。フィテッセの選手に払われるお金の大部分は、チェルシーからの資金によって賄われていたと思う。つまりボスはチェルシーだった」とコメントした。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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