ポゼッションを支える縁の下の力持ち 福西崇史のボランチ分析 ブスケツ編

北健一郎

元日本代表の福西崇史氏がブラジルW杯で注目のボランチを紹介。今回はスペイン代表のセルヒオ・ブスケツを分析する 【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会の開幕まで2カ月を切った。各国が世界一の座を狙い、4年に1度の祭典に照準を合わせている。今大会でも多くのドラマが見られることだろう。

 現代サッカーにおいてチームの出来を左右する重要なポジションとなるのが「ボランチ」。チームによって役割は変わってくるが、イタリアのアンドレア・ピルロ、スペインのセルヒオ・ブスケツ、そして日本と同じグループに入ったコートジボワールのヤヤ・トゥーレといったキープレーヤーたちが、攻守の要としてチームの舵取りをする。

 そこで、日本代表のボランチとしてW杯に2回出場した経験を持つ福西崇史氏にブラジル大会で上記のボランチ3人を分析してもらった。
 最終回となる第3回に紹介するのが、バルセロナで活躍するブスケツ。ポゼッションサッカーの象徴ともいえるバルセロナの中で、DFラインから前線へのつなぎ役を担う選手について解説してもらった。ボランチを見る楽しみを知れば、W杯がもっと深く、面白くなるはずだ。

バランスを意識し絶妙な距離感を保つ

 3人目はバルセロナのブスケツを分析していく。どこからでもゴールに直結するパスを出せるピルロや、有無を言わせぬ圧倒的な迫力を感じさせるヤヤ・トゥーレと比較したとき、ブスケツはこれといった特徴がない選手に映るかもしれない。しかし、バルセロナのサッカーはブスケツがいなければ成り立たないといっても過言ではない。

 バルセロナのシステムは中盤の3人がブスケツを底辺にしてトライアングルになっている。ピボーテと呼ばれるブスケツの役割は、DFラインと中盤から前線をつなぐ、いわば媒介役。DFラインはブスケツにボールを預けて、ブスケツがシャビや(アンドレス・)イニエスタにパスをつなぐことで攻撃が進んでいく。

 ブスケツは自分でボールを運んだり、パスを展開したりといったタイプではないので、常にバランスを意識している。それが表れているのがボールを持った選手との距離感だ。約5メートルの位置を保ちながら、ボールを持った選手が困ったら、すぐにボールを受けられるよう準備している。

円滑なパス回しを生むワンタッチの技術

 バルセロナは前を向いた選手にパスを出す。なぜならボールを持ったとき、前を向いた状態と後ろを向いた状態では視野や選べるプレーの数が変わってくるからだ。前を向いていれば、前方の選手の動き出しやスペースがどこにあるかが見えるので、正しい判断をしやすい。

 バックパスを多用するのもバルセロナの特徴だ。シャビやイニエスタが寄せられたとき、ブスケツは常にサポートの位置にいる。ブスケツがバックパスを受けている間に、シャビやイニエスタはスッと相手の視野から消えながら前を向いてフリーになる。こうしたプレーを繰り返すには、ブスケツのような受け皿になれる選手がいなければいけない。

 技術的にはワンタッチパスが素晴らしい。ブスケツのポジションではワンタッチでパスをさばいてチームのリズムを上げることが求められる。味方からのボールを止めることなく、正確に次の味方、あるいはパスを出した味方に戻すのは、簡単なように見えて実はかなり高度な技術が要求される。

 基本的には距離の短いパス交換が多いが、フリーの選手が前方にいるときや、サイドを大きく変えたいときは長い距離のパスも使う。キックの種類はほとんどインサイドしか使わない。だが、インサイドで距離や高さを細かく調節できる。例えるなら、1本の筆だけであらゆるタッチの絵を描き分けるようなものだろうか。

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著者プロフィール

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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