ソチは通過点、挑戦の舞台は冬から夏へ 20年東京パラリンピックへと続く道

瀬長あすか

小池はスキーと自転車の両立目指す

小池はアルペンと自転車競技の両立を宣言。資金確保の課題もあるが、「両方とも諦められない」と強い意欲を見せる 【吉村もと/MA SPORTS】

 もうひとり、アルペンスキーの小池岳太(セントラルスポーツ)も、スキーを続けながら夏季大会に挑戦すると表明している。

 パラリンピック3度目の出場となった今大会は、大回転などで9位が最高成績。4年前のスーパー大回転と同じ順位で「世界に置いていかれた」と肩を落とした。

 ソチでは起伏が激しく、荒れるコースの攻略に苦しんだ。「体のバランスをうまく取り続けるテクニックが足りていない」と振り返り、落下速度を上げるためのさらなる筋力アップが課題だと実感した。

 現在31歳という年齢を踏まえ、トレーニングを一から見直すことも検討する。それと同時に、20年東京パラリンピックの自転車競技に挑戦することも決めている。長年、効率良く持久力をアップさせるために自転車通勤をするなど、スキーのトレーニングの一環として自転車を取り入れてきた下地があった。

 それを競技として挑戦しようと思ったきっかけは、「やはり五輪・パラリンピックが東京に決まったこと。トレーニング次第では現役も可能なので、この世界で行けるところまで上を目指したい」。

 アルペンスキーと両立していくことに対しては、「今まで以上に厳しくなる。共倒れする可能性もあるけれど、両方とも諦められない」と力強く語る。

 サッカーに熱中していた大学時代、交通事故に遭い、左腕が動かなくなった。だが、ケガをした後も、ゴールキーパーを卒業まで続けた根性の持ち主だ。幼いころから、スポーツ好きの両親に連れられ、スキーにも親しんでいた。当時、小池にパラリンピックへの挑戦を勧めた日本体育大の野村一路教授は言う。「気力や体力がある限り、トップで続けてほしいし、その経験を次のキャリアにつなげるべき。それがアスリートの使命だと、昔から教育してきた」

 問題はスポンサーの確保だ。小池はこれまで事故の保険金を切り崩し、遠征にかかる費用などにあてていたが、昨年3月に底をついた。カンパを集めてなんとかソチまでつないだものの、今後は2競技分の資金確保がのしかかる。

一足早く冬から夏へ転向した選手も

 ソチの前に、一足早く自転車競技に転向した冬のパラリンピアンがいる。クロスカントリースキーでバンクーバー大会に出場した視覚障害の鹿沼由理恵(メットライフアリコ生命保険)だ。ソチを目指していた練習中に左肩を痛め、挫折を味わったときに見つけたのが、「自転車でパラリンピックにもう一度出場する目標」だった。海外の選手とメールのやり取りをする中で、多くのトップ選手がクロストレーニングとして自転車にも取り組んでいることを知ったことがきっかけとなった。

 それから2年。昨年のパラサイクリング世界選手権に初出場し、6位に入った。「クロスカントリーで鍛えたスタミナには自信があるし、何より冬のパラリンピックで達成できなかった悔しさがパワーになっている」と語る。

 小池も壁はいろいろとあるが、スキーと自転車の両方に挑戦する選手として、新たなモデルを作り、挑戦する姿を家族や支えてくれた人たちへの恩返しにしたいと考えている。

 冬から夏に舞台を移しても、彼らの目指す場所は変わらない。地元開催のパラリンピックでメダル獲得を、という新たな目標。ソチから東京へ――。その道はまっすぐと続いている。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント