小笠原歩「みんなよく戦ってくれた」 カーリング女子主将が語るチームへの思い

スポーツナビ

3度目の五輪に臨んだ小笠原(中央)。4年前までとは違う、今大会までを振り返った 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 3度目の五輪は5位。小笠原歩(北海道銀行)にとっては過去最高の成績となる。2006年のトリノ五輪後に結婚し、出産を経験。11年に現在のチームを結成したが、当初は試合の感覚がなかな取り戻せず、「現役に復帰して良かったのかな」と悩んでいた。しかし、昨年12月の最終予選を勝ち上がり五輪への出場権を獲得すると、本大会では主将としてチームを力強くけん引してみせた。カーリング日本女子チームは格上と目されたスイスや中国に勝利し、最終戦まで準決勝進出の可能性を残す大躍進。惜しくもベスト4はならなかったが、その勇敢な戦いぶりは、多くの人に感動を与えた。

 「1年前からは想像できないぐらいチームが成長しての今なので、『よくここまで来られたな』という気持ちです」。悔しさを見せつつ、そう笑った小笠原に、五輪での戦いぶりやそれに懸ける思い、チームを引っ張る卓越したリーダーシップについて語ってもらった。

「私の気持ちが分かるのは目黒さんかな」

――小笠原選手にとって3度目の五輪は5位。この結果をどうとらえていますか?

 あと一歩のところだったので悔しいという気持ちと、1年前からは想像できないぐらいチームが成長しての今なので、「よくここまで来られたな」という気持ちです(笑)。時間が経つと悔しいですね。でも終わったときは、「みんなよくここまで戦ってくれたな」という気持ちでした。

――大会を通じてのターニングポイントはご自身ではどこだったと感じていますか?

 毎試合どこも強豪だし、負けた韓国と米国も、実績やランキングは向こうの方が高かった。でも負けても勝っても接戦だった、いい試合ができたというのは見ている方々も楽しかったんじゃないかなと思います。英国戦だけ最後に5点取られたんですけど、我慢して少ないチャンスをものにしよう、最後の1、2投で、というすごく見応えのある試合だったんじゃないかなと。私もやっていて、どんどん点差は離れていくんですけど、あの試合は面白かったです。

――スキップはすごく重圧のかかる立場だと思いますが、それをどう跳ね返していたのですか?

 いや、たまに受けちゃってガーンとなるときはありましたよ(笑)。でも五輪などの大舞台でスキップを経験した人でなければ分からない、極限の緊張やプレッシャーは口では表せないです。いかにいつも通りのプレーができるかがスキップの差だと思うので、帰ってから目黒(萌絵)さんと「つらいよね」と話をしますよ(笑)。私の気持ちを分かるのは目黒さんかなと。それぐらい極限でやっているので。4年前のバンクーバー五輪でも、涙目の萌絵ちゃんを見ていると自分が泣いちゃって。本当に大変だと思います。

「合宿とかではみんなに引っ張ってもらう」

――主将としてリーダーシップを発揮していたと思いますが、元から引っ張るタイプだったのですか?

 違いますよ(笑)。元はスキップでもなかったですし、イエスマンという感じで人に付いていくタイプでした。人前で話すこともできない感じで、元はシャイなんですよ。でもトリノ五輪のころから、コーチにスキップをやれと直前に言われ、そこで覚悟を決めました。「自分がやらなきゃいけないんだ」と思うと、チームを引っ張ったり、精神的にも強くなりました。今回は若手もいる中で、五輪に連れていってあげたいという気持ちもあり、コーチが近くにいない分、自分がコーチのように、技術的な部分でも精神的な部分でもグイグイ引っ張ってきたつもりです。そうじゃないと今はなかったと思うし、口で言っている分、自分もショットで納得させるようじゃないとダメだと思っていました。最後の方で私のミスがあり、チームに厳しくしていた分、その恩返しができなかったのは、申し訳ないと思っています。

――大会前に勝つためには若手選手の覚醒が必要と言っていました

 こういう大舞台は初めてでしたが、中盤から緊張もほぐれ、のびのびとやっていたので本当に素晴らしい、よくやっているなと思いましたね。「ミスしても全然いいから」と言っていたし、投げるだけじゃなくスイープとか仕事もあるので、そこでも頑張ってくれと伝えていました。

――普段はどのように接しているんですか?

 普通ですよ。私、氷から下りれば全然怖くない人(笑)。合宿とかはみんなに引っ張ってもらうぐらい何もしないんで(笑)。オンとオフがかなり違うと思います。だからみんなは付いてきてくれるのかもしれません。ずっと厳しかったら私だって嫌ですよ。年齢差は関係ないと私は思っています。目指すものは一緒なので、努力して付いてきてくれるならひと回り以上違っても関係ないと思います。

――練習では多少厳しく?

 トリノ五輪のときは個々の技術が高かったので、言わなくてもできていたことが、まだまだ技術的にボロが出やすいので、そこはきちんと言わないと変わってこない。今までの自分たちの技術を超えなければ、五輪は絶対ない、そこを引き出せるようにと思っていました。コーチみたいだなと。コーチであり、マネジャーであり、スキップであり、選手だったと思います。氷上では引っ張っていましたが、日常では子供の面倒を見てもらったり甘えてましたね(笑)。

――若手選手がチームにいるメリットは?

 パワーがあるのでスイープですよね。(小野寺)佳歩ちゃんのスイープがあって、私のストーンが伸びていったり、そうやってきて今がある。技術的にはまだ粗いですけど、こういう舞台を経験すれば技術も伴っていくので、(吉田知那美と小野寺は)将来楽しみな若手だと思います。

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